思春期の子どもと向かい合う
「いい加減にして!」「うざい!」――修復不能な親子関係に陥らないために、親は具体的にどのような対応をすればいいのでしょうか。
子育てコーチングのプロが出し惜しみなしで解説する家庭向け直販本『「言うことを聞かなくなってきた子」の育て方』~思春期に入る前に知っておきたいこと~からご紹介します。
※本稿は、東ちひろ著『「言うことを聞かなくなってきた子」の育て方』(PHP研究所)の「第1章 思春期のことを知っておこう」より一部を抜粋・編集したものです。
東ちひろ(ひがし・ちひろ/一般社団法人子育て心理学協会 代表理事)
幼稚園・小学校教員、中学校相談員、教育委員会勤務を経て、「東ちひろマザーズセラピー」を主宰。その後「子育て心理学協会」を立ち上げ、代表理事を務める。社会人(女)・社会人(男)の二児の母。教育に携わって30年、今まで相談を受けた子ども・保護者・学校の先生の数は、2万件以上、改善率93%、学校復帰率75%。著書多数。
東ちひろホームベージ 東ちひろプログ
だんだんと手を放していくのが基本
この時期の子育ての基本は、少しずつ子どもにまかせて手を放していくことです。大人から見れば危なっかしいことばかりかもしれませんが、極力親は口出しをしないで、信じて見守る態勢で接します。
11歳の子どもが、16歳(5年後)、21歳(10年後)、26歳(15年後)になったときに自立をしているためには、幼稚園のころと同じ子育てをしていてはいけないのです。
この時期の子どもの中身は半人前ですから、親にしたら、文句ばかりで行動が伴わず、腹立たしいことが続出します。子どもを信じて見守るというのは、言葉としてはきれいですが、実際には「そんなことではダメだろう」「もっとしっかりしてほしい」と感じてしまいます。
見ていられなくなってガミガミと言ったり、腹いせまじりに暴言を吐いたりすることも多くなると思います。しかし、半人前のわが子を、「あえて」大人として扱うことが、本当の大人へと育てていくことになるのです。
一人の人として尊重する
子どもの思春期とどう向かい合うといいのでしょうか。
この時期の子どもは、「言うことは一人前、することは半人前」の状態です。親への要求だけは一人前にするけれど、親からの要求はまったく聞き入れないという、わがままで身勝手に思える時期に突入しています。
体も心も不安定なこの時期は、子どもから売られたケンカは買わないようにします。ケンカをするに足らないといったところでしょう。よほどのことではない限り、子どもの言うことは、あえて否定をせずに言わせておきます。そして、これだけは言っておきたいと思ったことついては、「私メッセージ」を使って伝えます。
私メッセージとは、「お母さんは」を主語にして、あなたが感じたことを子どもに伝える言い方です。この言い方をすると、こちらの本当に言いたいことがまっすぐに伝わります。
一方、「あなたは」を主語にした言い方を「あなたメッセージ」と言い、相手は自分が責められたと感じやすくなります。思春期の子に伝えたいことがあるときは、「お母さんは○○と思うけどね」と、お母さんが思っている気持ちをそのまま伝えます。
また、「お願いだから、そろそろお風呂に入ってほしいな」と、お願い口調を使ってやりとりをするのもいいでしょう。それは親が子どもに気をつかうとか、子どもの言いなりになるということではありません。一人の人格がある大人として子どもと接していくということです。
例えば、あなたが夫の両親と同居をしているとしましょう。その家には、成人した未婚の義理の弟が同居しています。思春期の子どもは、この義理の弟のようなものです。頭ごなしに怒って自分の考えを言ってばかりでは、相手に嫌な思いをさせることでしょう。関係性も悪くなります。
だからといって、お客さんのようになんでも好き勝手にさせてしまうと、こちらばかりが我慢することになってしまいます。成人した義理の弟であれば、「今日は夕飯を食べますか? 食べないとわかっているなら教えてほしいわ」と、理性的に言うことで関係を良好に保てます。
親だからといって、子どもに遠慮なく、頭ごなしに言いたいことを言っていては、あっというまにお互いの関係性が壊れてしまいます。子どもだからといって、遠慮なく言いたいことをすべて言っても許されるわけではないのです。ごく普通に、一人の大人として子どもを尊重して、気を配り、付き合っていくのがいいのです。
「言うことを聞かなくなってきた子」の育て方(PHP研究所)
「いい加減にして!」「うざい!」――修復不能な親子関係に陥らないための子育て法。具体的な対応を知りたいお母さんへ、子育てコーチングのプロが出し惜しみなしで解説しています。