怒らない、叱らない?「何を言っても聞かない子」が変わる親の接し方

庄子寛之

叱るでも、怒るでもなく「諭す」

さあ、言葉がいかに必要ないものか、分かっていただけたかと思います。ここで、「間」の使い方について、少し技術的なお話をしたいと思います。

親は、思っているほど「間」がとれていません。「間」を意識したという人のスピーチを聞いても、「もっと待てばいいのに」と思うことばかりです。

とある親子のやりとりを例に挙げてみましょう。

先日、小学生の長男が妹に手を出して泣かせてしまいました。そこで、すぐに長男を呼びました。
長男と2人きりになって、どうして手を出したのか、妹を悲しませるようなことはしないでほしいと伝えようとしました。感情的にならないように気をつけて。
それでも、長男はプイと横を向いたまま、まったく答えてくれようとしませんでした。
あのとき、どういうふうに親の思いを伝えたらよかったのでしょうか?

ちゃんと話したいのに、子どもに響かない。叱るもだめ、褒めるも効果なし。

どうすればいいかと悩んだ経験は、どなたにもあるのではないでしょうか?

このようなケースでは、まず見ましょう。どんなことを考えているか想像しましょう。

ちらっと目が合いました。そのタイミングで話しかけてはいけません。まだ待ちます。

悪い叱り方で言えば、ドラえもんののび太のお母さんでしょうか。のび太はいつも反省しているように見せて、その場をしのぐことしか考えていません。そうなってはいけないのです。

ちらっと目が合ったあとも話を始めないと、子どもはいろいろ心の中で考え始めます。お母さんは今何を考えているんだろう。

この「間」がお母さんから問題を突きつけられているようで、気まずい。これは嫌だから、こういうことは今後、絶対にするのはやめよう。今回のこういうところが悪かったのかな。

「間」を十分にとって子どもの体と足がこちらに向いて、心から話を聞けるようになったら、あとは「叱る」でも「怒る」でもなく「諭す」のです。

「今回やったことはいけないこと。でも、してしまう気持ちは分かるよ。実はお母さんもね……」
「あなたはこんなことをする子じゃないって知ってる。お母さんはあなたを信じてるからね」
「今回やってしまったことはいけないと思う。でもきっと何か理由があったのだと思う。これからどうしようか。お母さんも一緒に考えるよ。あなたはこの問題に向き合うことができる子だから大丈夫」
「どうしたい? 謝るなら、お母さんも一緒に行って謝るよ。あなたは素晴らしい子だから、もう繰り返さないことは知ってるから。お母さんは信じてるから」

「叱る」よりも「怒る」よりも「諭す」こと。それが何より我が子の心に響きます。

そのためにも、まずは「間」を意識する。それが子どもの考える心を育てます。お母さんが自分を見てくれているという安心感を与えます。

とにかく長い「間」を意識してみてください。


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