「いい子症候群」は危険 過度に叱ったり、期待して起こる反動

諸富祥彦

一見、問題がないように思えて、実は多くの問題を抱えていると言われる”いい子症候群”。わが子を、そんな”いい子”にしないために、親はどのように関わっていけばいいのでしょうか。

※本記事は、「PHPのびのび子育て」2020年8月号特集「『叱り方』で子どもの性格は変わる!」より、一部を抜粋編集したものです。

諸富祥彦(もろとみ・よしひこ/明治大学文学部教授・教育学博士・臨床心理士・公認心理師・教育カウンセラー)
1963年福岡県生まれ。「すべての子どもはこの世に生まれてきた意味がある」というメッセージをベースに、30年以上、さまざまな子育ての悩みを抱える親に、具体的な解決法をアドバイスしている。著書に、『男の子の育て方』『女の子の育て方』(PHP文庫)など多数。

いい子の何が問題なのか

親に逆らったり、わがままを言ったりするなど、親を困らせるようなことを絶対にしない。そういう子はどこにいっても、誰からも「いい子ね」とほめられますし、実際、お父さんやお母さんにとっても育てやすく、「親孝行な子」と嬉しく思うでしょう。しかし実際には、”いい子症候群”に陥っている恐れがあります。

“いい子症候群”とは、簡単に言えば「親の期待に頑張って応えようとする子のこと」。それのどこが悪いのか、と思うかもしれませんが、現実には、のびのび自由に子どもらしく過ごすことができず、心の中にストレスを抱え込んでしまいます。

成長とともにその傾向はますます強くなり、「これは本当の自分じゃない」「自分の人生を生きている気がしない」と、心の中が常にモヤモヤしてしまうのです。そしてその反動で、突然キレたり、親を困らせるような問題行動を次々と引き起こしたりするケースも少なくありません。

子どもを”いい子症候群”にしてしまう要因として、親が感情的に叱る、過剰に期待するなどが挙げられますが、あなたはどうでしょうか? 普段の関わり方を振り返り、愛するわが子が「幸せな人生」を送れるように、親としてどのようなことを心がけていけばいいのか、考えていきましょう。

「いい子症候群」の5つの特徴

“いい子症候群”には、大きく分けて5つの特徴があります。お子さんに当てはまるものはありますか?

(1)言動が受け身

親がどう思うか、親からどう思われるかが何よりも大事で、自分の気持ちを後回しにするため、自分から積極的に「〜したい」「〜しよう」と言うことがありません。園や学校でも自分は何を期待されているのかと、先生や友だちの顔色を常にうかがい、誰かが「〜したい」「〜しよう」と言うのを待ってしまいます。

(2)イヤと言えない、抵抗できない

親の言うとおりにしない=意見するのは悪いことだと思っているため、たとえば、友だちにイヤなことをされても「ノー」と言えなかったり、いじめられたりしても「自分が我慢すればいいんだ」と思い、抵抗できません。「こんなことをされるのは、自分が悪い子だから……」と、自己否定へとつなげることも多いです。