わが子を「自分で決められない大人」にしないために
自分で自分の事が決められない若者が増えています。その原因は、「親の関わり方」であることが多いのです。
※本記事は、諸富祥彦著『「自分がない大人」にさせないための子育て』(PHP研究所)より、一部を抜粋編集したものです。
諸富祥彦(もろとみ・よしひこ/明治大学文学部教授・教育学博士・臨床心理士・公認心理師・教育カウンセラー)
1963年福岡県生まれ。「すべての子どもはこの世に生まれてきた意味がある」というメッセージをベースに、30年以上、さまざまな子育ての悩みを抱える親に、具体的な解決法をアドバイスしている。著書に、『男の子の育て方』『女の子の育て方』(PHP文庫)など多数。
大学選び、就活活動…親が中心になって決める
大学を選んだり、就活や婚活をしたりする場面でも、親御さんが口を挟むケースが増えています。大学選びでは、ほぼ親が中心になって決めているようなケースも、多々あります。
大学のオープンキャンパスというのは、本来は、高校生が大学を見て回って、模擬授業を受けるなどして、「どこの大学が自分に向いているか」を体験する機会なのですが、相談コーナーなどでも、子どもはほとんど無言で、お母さんのほうが一生懸命、饒舌に「うちの子はこういう子で、だからこの大学がいいと思って」といったことを、ひたすらしゃべっている。
そういうこともしばしばあり得るのです。大学を選ぶのに、親御さんが極めて熱心で、子ども自身はそれほど積極的ではないということが、結構あるわけです。
就職活動でも同様です。子どもに任せておいたらろくな企業に行かないだろうということで、「本当にその会社大丈夫なの? どんな会社なの?」と、もうほとんど、親御さんが就活の中心であるかのような役割を果たしていたりすることも多いわけです。
最近よくあるのは、就活のときはさすがに親が出ていくと採用されないのでは、と思って控えていても、入社した後に、親がどんどん子どもの会社に連絡をしてきて、上司に絶えず連絡を取っている、というケースです。
「うちの子はもう社会人だから、一人前になったんだ、親は一歩引かなくては」という意識が低い。いつまでも自分の子どものことは親が守ってあげなくては、という意識が取り除けない。そういった親御さんが増えています。
人生の大事な選択すらも親任せ
婚活では、さらにその傾向は強くなります。ほうっておいたら、いつまでも恋人一人連れてこない。結婚の話が全く前に進まずに悩んでいる方は、非常に多いのです。
たとえば、これもテレビ等でよく知られていると思いますけれど、今、親御さんが中心になった子どものための婚活パーティーが行われています。つまり、親自身の婚活ではなくて、子どもの婚活パーティーに親が自分の子どもの写真を持って参加するのです。
こんなふうに、子どもの大学進学、就職活動、婚活という、人生の一大選択をするような場面においても、親がいちいち顔を出して介入してくるというケースが、非常に増えているのです。
こういった現象が、子どもがいつまでも子どもでいられる状況をますます先延ばししているように思います。私はこう言います。子どもというのは、大人扱いをされれば、だんだん大人に成長していくのです。
けれど、周りの大人が子ども扱いをしていたら、いつまでも子どものままにとどまるのです。なぜなら、人間は楽なほうに流れるからです。大人になるよりも、子どもでいたほうが楽ですからね。
ですので、子どものままでいたい、つまり周りにいろんなことを決めてもらう状態に、どこかで止まっていたいという甘えの心理が子どもの側にはあるわけです。