開成高校の元校長が教える、「思春期のイライラ」との上手な付き合い方

柳沢幸雄
2023.10.18 14:55 2023.02.27 18:19

悪態をつかれても怒らない、話を否定しない

手

もし、子どもが「今日は部活で疲れた」と短く言ったとしたら、「そう、お疲れ」とねぎらったあとに、「何をやって疲れたの?」などと質問をしてみましょう。

「うるせぇな」などとつぶやいたとしても、そのあと、「筋トレ」などとぶっきらぼうに答えるのではないでしょうか。

ここで、腹を立ててはいけません。思春期の男子なら、答えただけマシだと思いましょう。

根掘り葉掘りではなく、短い会話を続けていくことで、だんだん長くしゃべるようになります。機嫌がよければ、自分がどれだけ今日がんばったかの自慢話や、部長がどれだけ理不尽な練習を課してくるかの愚痴など、言ってくるのではないでしょうか。

こんなとき、保護者はまた、「自慢ばっかりして」「部長が言うことも当然なんじゃないの?」など、子どもの言うことを否定してしまいがちです。そうなると口を閉ざしてしまいます。

「そうか、がんばったんだね」「そうか、練習、きつかったね」など、オウム返しのように言い、共感する。

いきさつがわからないことは質問する。こうしているうちに、「オレも、もう一息がんばらないとな」「要するに部長はこう言いたかったんだな」などと、自分で解決策に結びつけることができるのです。

基本的には、小学生も中高生も、思春期でも問いかけ方は同じです。共感する、質問する、そしてまた共感する。どれも大人は短い言葉と笑顔を心がけます。

ハーバード・東大・開成で教えてわかった 「頭のいい子」の親がしている60のこと

『ハーバード・東大・開成で教えてわかった 「頭のいい子」の親がしている60のこと』(PHP研究所)
東京大学、ハーバード大学、開成学園、そして現在の北鎌倉女子学園、50年近い教員生活の経験と、親としてアメリカでの体験を踏まえ、保護者の方々が子どもとどう関わればよいかを、著者がていねいにアドバイスします。

柳沢幸雄

柳沢幸雄

1947年生まれ。前・開成中学校・高等学校校長。開成高等学校、東京大学工学部化学工学科卒業。71年システムエンジニアとして日本ユニバック(現・日本ユニシス)に入社。74年退社後、東京大学大学院工学系研究科化学工学専攻修士・博士課程修了。ハーバード大学公衆衛生大学院准教授、併任教授(在任中ベストティーチャーに数回選ばれる)、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授を経て、2011年から開成中学校・高等学校校長を9年間務めた後、2020年4月より現職。シックハウス症候群、化学物質過敏症研究の世界的第一人者。