「あだ名」から始まる子どものいじめ…やめさせるために親にできること

堀田秀吾

会話、SNS、ネット、噂…ことばを使ったいじめや加害行為がますます増えています。とくにデジタルネイティブな子どもたちは、ネットを通じてそれらのことばを日々、受け取り、ときには自分も発信者になっていたりします。

ことばのいじめから、どうやって子どもの心を守り、またいじめをさせないようにするか。明治大学教授で言語学博士の堀田秀吾氏が著書『いじめのことばから子どもの心を守るレッスン』から、言語学・法学・社会心理学・脳科学等の分野からいじめのことばに科学的に効くアプローチを紹介します。

※本稿は堀田秀吾著『いじめのことばから子どもの心を守るレッスン』(河出書房新社刊)より一部抜粋・編集したものです。

堀田秀吾(明治大学教授)
言語学博士。言語学、法学、社会心理学、脳科学等の分野から言葉とコミュニケーションをテーマに研究を展開。『人間関係の99%はことばで変わる!』『科学的に元気になる方法集めました』等著書多数。

あだ名はなぜつけられるのか

あなた、またはあなたの子どもは友だちから嫌なあだ名を付けられたことはありませんか。身体的な特徴、たとえば「ほくろ」「のっぽ」などがそれにあたります。

もともと人間には対象となる人やものごとの特徴を見つけて、それを手がかりにその対象を認識したり、表したりする傾向があります。専門的には、そういった能力を「参照点能力」と言います。そしてその手がかりになりそうな特徴を「参照点」と言います。あだ名はその参照点を通称にする行為なのです。

たとえば、「漱石を読む」と言った場合、「夏目漱石の「小説」を読む」というのが本当の意味です。その中で「漱石」という名前を参照点として、小説のことを表そうとしています。

同じように、顔や体の特徴があれば、そこが特徴的な参照点となるのです。もし、子どもが友だちのことを何かのあだ名で呼んでいるならば、それがその人にとって快く受け入れられるかどうかを考えたり、確認してから呼ぶように伝えましょう。

たとえ他の人から見てうらやましい特徴だとしても、本人にとってはコンプレックスであることは珍しくないので、友だちが呼ばれて嫌ではないか子ども自身に確認させるのです。あだ名をつけるときには、「〇〇って呼んでもいい?」と相手に聞くなどしてあげるのが理想的でしょう。

好きではないあだ名をやめさせるには

逆に、好きではない部分を参照点としてあだ名にされてしまったら、どうしたらよいでしょうか? とてもつらいですよね。一般的に次のような行動に出る人が多いようです。

・はっきりと嫌だと伝える
・みんなの前ではとりあえず受け流しておいて、あとで二人きりになったときに、その呼び方は嫌だと伝える。
・そのあだ名で呼ばれても返事しない
・不快だということを態度で示す

このようにいろいろな方法がありますが、相手の性格や状況によって手段は選ぶ必要があります。

最初の二つは相手に「やめてほしい」という要求をするタイプの対処法です。このように相手に何かを要求する場合のコミュニケーションの理論をご紹介します。