「思いやりの心は3歳で現れる」子どもの優しさを育む共感テクニック

堀田秀吾

兄弟を叩いたり、友達とケンカをしてしまったり…子どもによくあることとは言え、親は心配してしまいます。他者にやさしい心を持ち、共感力のある子に育てるためには、どういった声かけをしたらよいのでしょうか。言語学博士の堀田秀吾さんにオススメのフレーズをご紹介いただきました。

※本稿は、子どもの声かけ検討委員会(著)、堀田秀吾(監修)『子どもがやる気になる!「親のひとこと」言い換え辞典』(三笠書房)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

堀田秀吾(明治大学教授)
言語学博士。言語学、法学、社会心理学、脳科学等の分野から言葉とコミュニケーションをテーマに研究を展開。『人間関係の99%はことばで変わる!』『科学的に元気になる方法集めました』等著書多数。

お悩み1. ケンカして、兄弟を叩く

子どもの小さなケンカは日々起こることですが、暴力はちょっと見逃せません。親もカッとしやすい場面、どう対処しましょうか。

【言いがちフレーズ】
いいかげんにしなさい!

【おすすめフレーズ】
叩いたらお兄ちゃん、痛いよ。ソウタだっていい気持ちにならないでしょ?

ソウタくんはお兄ちゃんと3歳違いの弟です。いつもお兄ちゃんに何かとやり込められています。いつもの通り、お兄ちゃんがちょっかいを出してきました。ソウタくん、今日はやられまいと思いっきりお兄ちゃんを叩きました。

「ソウタ! だめでしょ!」
ママは怒ります。
「そうだぞ、暴力はいけないんだぞ」
お兄ちゃんは得意満面。
ソウタくんは泣きながら、叩くのをやめません。

<解決策>「叩かれたら相手も痛い」ことを教える

叩く以外にも、噛むなどして誰かに攻撃をしやすい子どもはいます。不満や怒りをうまく言葉で表現できないため、他者への攻撃という形で表れてしまうからです。

ケンカは、他人とどう関わっていくかを学ぶための貴重な機会という一面があります。とはいえ、親としては、ケンカをしないで解決する方法を身につけさせることも大切です。

そこでカギになるのが「相手に共感し、思いやる気持ち」です。こうした気持ちは、1~3歳で表れ始めます。ですから、子どもが相手を叩こうとした時、「叩かれたら相手も痛いよ」などと言ってあげると効果的です。

暴力はいけないことを伝え、不満や怒りの感情を言葉にする練習をしましょう。子どもがうまく言葉にできない場合、親が「怒っているの?」「やめてほしいの?」などと子どもの気持ちを想像して言ってあげてください。子どもが客観的に考えるきっかけとなり、怒りをある程度抑えることができます。

また、怒りを抑えるしぐさを普段から練習しておくといいでしょう。怒りそうになったら、左手をぎゅっと握って「怒らない、怒らない」と心の中で10回つぶやくなどは効果的です。左拳を握ると、感情のブレーキの働きをする右脳が活性化するからです。