親が喜ぶのは海外大より東大? 東大・MITのW合格者が直面した「受験の現実」

前田智大

ギリギリでの海外志望が、かえって幸いした

受験対策では、「Route H」という、ベネッセが運営する海外大学進学塾が、大いに助けになりました。この塾はもともと、灘の先輩がベネッセに海外受験支援の必要性を訴えたことがきっかけで作られたそうで、私も、先輩の紹介でご縁ができました。

必要書類や準備方法について役立つ情報をもらえたのはもちろん、とりわけ助けられたのがエッセイ指導です。

作成したエッセイを送って添削してもらうのですが、毎回ズタズタに「赤」が入りました。修正して出すと、また真っ赤になって戻ってきます。それを何往復も繰り返して、少しずつ、形あるエッセイに仕上がっていきました。

あとはひたすら、英語を勉強。授業中も、机の下で英語のテキストを開くこと数知れず。電車の中でも毎日、単語帳を音読していました。かなり怪しい姿だったと思いますが、海外で学業を修めるに足るレベルの英語力をつけるには、いくらやってもやりすぎではないと考えたのです。

もっとも、元から一定の基礎力はあったと思います。英語の恩師である木村達哉先生は単語量を非常に重視される方で、私も日々、単語力強化に努めていました。

また、中学3年生のころから週に1回25分、スカイプを使って英会話のレッスンを受けていました。海外の方と日常的なことをおしゃべりするだけのカジュアルなスタイルですが、定期的に英語を話していたことが、スピーキング力の底上げになっていたことは確かです。

こうしてさまざまな努力をしつつも、内心の切迫感はかなりのものでした。高3の4月という遅いタイミングでのスタートで、果たして12月に間に合うのか、と。

しかし今思えば、「ギリギリでの志望決定」が幸いした部分もあったかもしれません。

というのも、海外に出てから知った日本人留学生や、私のあとに海外を目指した後輩たちを見ていると、意外に、ギリギリで決めたほうがうまく行くケースが多いのです。

早くから海外志望でいると、課外活動をするにも「受かるため」という不純な要素が入り込みやすいようです。となると活動そのものを楽しめず、それが成果にも影を落とします。

大学側も、純粋な興味関心ではなく「この大学に入るために頑張りました」という気配を感じ取ると、評価を下げます。興味のあることに打ち込んできた結果、「そちらの大学ならもっと極められると思いました」という動機のほうが、説得力が上なのです。

図らずも後者のタイプになれた私は、つくづく幸運だと思います。

『灘→東大→MITに合格した私の「学びが好きになる」勉強法 子どもの可能性を開花させる中学・大学受験』(PHP研究所)
中学、高校時代の家での勉強時間は1時間。塾通いもほぼゼロ。東大とマサチューセッツ工科大学をダブル合格した著者が伝えたいAIに勝てる「頭の良さ」が身につくたった1つのこと。