感謝の言葉を伝えよう

池崎晴美
2023.03.09 14:49 2023.03.09 14:49

「ありがとう」がもつ力をまざまざと実感

手

子どもは大きくなると、親とあまり口をきいてくれなくなります。小さいころはあんなによく話してくれたのに……と思うことも珍しくありません。

かくいう私自身がそうでした。長男が大学進学で一人暮らしを始めてからは話す機会がグッと減りました。「元気にしているかな?」と思って電話をしてもぶっきらぼうな対応。たまに電話をくれることもありましたが、愛想がないのは同じです。

「もっとお互い、気持ちよく話せないかな」と思った私は、あることを思いつきました。それは息子が電話をかけてきてくれたときに「ありがとう」と言ってみよう、ということです。

しばらくして電話があったとき、受話器を置ぐ前に「電話をくれてありがとう」と言ってみました。そうしたら、しばらく無言。どうやら驚いているようでした。もしかすると照れていたのかもしれません。

でもこの日をきっかけに、電話がかかってくると、お互い優しい気持ちで話も弾むようになりました。「ありがとう」の威力をまざまざと知った経験です。

「有り難い」ことへの感謝の思い

ママの話を聞く子

相手にも自分にも喜びを与えてぐれる「ありがとう」。この言葉をログセにすると、いいことがたくさん起きるようになります。

最近うれしかったことを思い出してみてください。誰かに親切にされたこと、優しくされたことはなかったでしょうか?

その行為に対して「ありがとう」と言ったら、相手はうれしそうな顔をしませんでしたか?

あるいは、その逆のパターンとして、あなたの親切に相手が「ありがとう」と言って、うれしくなったことはなかったでしょうか?

自身の行為に対して相手が「ありがとう」と言ってくれた。そして、そのことに喜びを感じた。私は、人が感じる喜びのなかでもそれは特別な価値をもつものと考えています。

「感謝する喜び、感謝される喜び」

これこそが人づきあいのなかで、もっとも大切なことと言っても過言ではないと思います。そのことをお母さんがわかっていると、子どもも必ずそうなってくれます。

「ありがとう」とは「有り難い」という言葉を語源にもちます。有り難いとは「当たり前ではない」ということ。貴重なものだからこそ感謝するわけですね。人から親切にされて「当たり前のこと」と思う人は、やはり傲慢な印象を与えてしまいます。

すべてを有り難いことと受け止め、感謝の念をもつようにしたいものです。

ここで提案です。親子で「ありがとう探し」をしてみましょう。

まわりの人たちを対象にして、その人への「ありがとう」を数え上げていくのです。お父さん、おじいちゃん、おばあちゃん、友だち、先生……。たくさんの「ありがとう」が見つかります。

例えば、お父さんに「ありがとう」と言うとしたら、どういうことに関して感謝したいですか?

そういう「ありがとう」を数え上げていくと、まわりの人たちへの感謝の気持ちが自然に生まれ、優しい気持ちやハッピーな気持ちになるのです。

すでにみなさんの言葉の引き出しの一段目は、プラスの言葉で満たされているに違いありません。

『12歳までに身につけたい「幸せな人づきあい」の習慣』(PHP研究所)
上手に人づきあいをするために、必要となる習慣とは? 話し方講師の池崎晴美さんが語ります。