「子どもに伝わる叱り方」と「効果の無い叱り方」の違いとは?

渡辺弥生

叱るより効果的な伝え方

叱り方で悩んでいるお母さん、どうすればいいかを一緒に考えましょう。

POINT1:子どもがイメージできるように

叱っても子どもが言うことを聞かない理由のひとつは、お母さんの言葉が抽象的で、具体的にどうすればいいのか子どもにはわからないからです。しかも感情にまかせて叱っていたら、子どもは混乱するばかりです。

幼稚園や保育園の先生方は、子どもたちにわかるように伝えるプロです。子どもが騒がしい時に「静かにしなさい!」と怒鳴ったりしません。「お口のボリュームを1にしてね~」とわざとささやくように言ったりして、この年齢の子どもたちがイメージできるような伝え方をしています。

子どもにお母さんの「こうしてほしい」という気持ちを伝えるためには、まず伝える言葉が子どもに理解できるか、それによって子どもが具体的な行動をイメージできるか、がポイントなのです。

「お片づけしなさい!」と言うのではなく、「ここにあるおもちゃをこの箱に入れようね」と具体的に示したり、「お人形さんをおうちに帰してあげようね」と擬人化してみたり、「よーし、どっちが先に箱に入れられるか、お母さんと競争しよう」とゲーム感覚を採り入れたり、さまざまな工夫をしてみましょう。

POINT2:いいところを見つけてほめる

子どもが人前で騒ぐのは、お母さんにとって頭の痛いことですね。でも、うるさい時には「静かにしなさい!」と叱るのに、子どもが静かにしている時は、携帯電話をいじったりしてほめないお母さんをよく見かけます。

「いけないことを叱る」のもひとつの伝達手段ではありますが、むしろ効果が高いのは、「いいことをほめる」ことなのです。せっかく子どもが静かにしていたのですから「静かにしていて、えらいね」とほめましょう。そうすると、子どもは「静かにすることはいいことだ」と知ることができます。

ほめる時は、「何がいいことか」を具体的に示すことがポイントです。例えば「お片づけができたんだ、すごいね。こうすると、つまずいてケガしないよね」「今日はスーパーに行った時にお店で走らなかったね。お母さんうれしかったよ」など。

日頃から子どもを見ていれば、ほめることはたくさん出てくると思います。叱るのが苦手だ、子どもがわかってくれないと悩むより、小さなことでもいいので、まずはお子さんのいいところを見つけてほめましょう。

子どもの発達を楽しむ気持ちで

まじめなお母さんほど、子どものダメな面やできないことが目につきます。そこでつい、叱ってしまうのですね。叱ることがあってもいいとは思います。しかしこれまでに述べてきたように、「伝わらない叱り方」を考え直すことが必要です。

子どもは成長とともにできることが増えていきます。1年前にできなかったことが、今年はできる。そちらに目を向けたほうが、子育てはずっと楽しくなると思いませんか。

2歳くらいになると想像の世界を持てるようになり、砂をカップに盛ってごはんに見立てたりします。こんなに小さい子が、目に見える現実の世界とは別に、想像の世界を持てるようになるのです。これって、すごいことだと思いませんか?

3歳くらいになると、順番こや、「貸して」「いいよ」といった簡単なルールがわかるようになります。4歳になると、それを守れないことは恥ずかしいとかうしろめたいという気持ちを持つようになります。

また、4、5歳になると、お友だちと想像の世界を共有してゴッコ遊びができるようになり、ゴッコ遊びの中で、役割を細かく決めたり、相手の表情から相手の気持ちを推測できるようにもなります。わずか数年で、小さな心がこれだけ成長するのはすばらしいことです。

ただし、このような心は、放っておいて自然に育っていくものではありません。発達の段階に応じて、親が生活の基本や人とかかわる時のルールを教えていく必要があります。

その際、最初から完璧を求めないでください。大人でも物事を完璧にすることはむずかしいのです。子どもはできなくて当然、失敗があって当たり前と思いましょう。むしろ、失敗があるから気づきがあり、学びがあります。

子ども同士で物の取り合いや、貸す、貸さないのいざこざがあるのは自然です。自我という意識が芽生えてきたからこそ、他人とぶつかるようになるのです。そして、トラブルで嫌な思いを実感するからこそ、「自分中心ではダメだ、相手のことも考えないとうまくいかない」と学ぶのです。

そんな視点で子どもを見てみると、子どもは日々いろんなことを吸収し、その子らしく表現していることが感じられると思います。「叱らなきゃ」と思っていたことが、「成長したんだ~」という感心に変わるかもしれませんね。

こう考えると、子育てが楽しくなります!
POINT1:最初から完璧を求めない
POINT2:失敗するから「気づき」がある
POINT3:子どもの成長は親の成長