親に必要なバランス感覚

秦野悦子

秦野悦子先生の『子どもの気になる性格はお母さん次第でみるみる変わる』から、親の性格がどのように子どもの性格に影響を与えるのかを考えていきます。

※本稿は、秦野悦子著『子どもの気になる性格はお母さん次第でみるみる変わる』(PHP研究所)より、一部抜粋・編集したものです。

秦野悦子(白百合女子大学教授)
児童文化学科発達心理学専攻。専門は、発達心理学(言語発達、障害児のコンサルテーション、子育て支援)。臨床発達心理士。その他、日本発達心理学会常任理事、日本保育学会保育臨床相談システム検討委員、臨床発達心理士実践研究編集委員、一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構事務局長を務める。2006年より、わかふじ幼稚園副園長となる。三児の母。

親の性格が育て方にあらわれる

親の関わりが、子どもの性格・行動にどういう影響を与えるかを見てきました。ということは、親の性格の傾向により、子どもの性格も変わるといえます。あなたの性格のよい悪いを断じるわけではなく、「自分はこういう傾向に陥りやすい」という気をつけるポイントとして覚えておいてください。

子どもの言うこと、やることをそのまま受けとめる「受容的態度」をとる親の場合、子どもは自分の思いを制限されることなく出すことができるので、自己主張能力が高まります。

また、「よかったね」「つらかったね」と、子どもの気持ちにそうような「共感的態度」は、自分が抱いた感情を否定されることもなく、また親の共感により適正な感情の表現法を学べるので、子どもの自己制御能力を高める傾向があります。

一方、子ども自身の自由度が低く、あれこれ親が決定してしまう「統制的態度」は、子どもに無力感を学習させてしまいます。自分で決定した経験が少ないので自己有能感が低く、そのため自分のことすら自分でコントロールする自信がなく、自分を抑制することが苦手となるでしょう。

また、親の権力をふりかざし、時に脅しや体罰を交えた育児スタイルは、カの強い者が力の弱い者をねじ伏せてよいという関係を学習してしまいます。そのため、自分が優位に立てるときは強い態度で、そうでないときは卑屈な態度で周囲に接しようとするなど、状況によって態度を変え、自己主張だけが強くなってしまい、本当の意味での自己抑制能力が育ちにくくなります。