親子関係と子どもの性格

秦野悦子

子どもの性格が形成されていく過程には、さまざまな要因が影響します。そのひとつとして、「親の育て方が子どもの性格に影響を与える」というは間違いない事実でしょう。

今回は、2012年1月に小社から発刊した秦野悦子先生の『子どもの気になる性格はお母さん次第でみるみる変わる』から、親の性格がどのように子どもの性格に影響を与えるのかを考えていきます。

※本稿は、秦野悦子著『子どもの気になる性格はお母さん次第でみるみる変わる』(PHP研究所)より、一部抜粋・編集したものです。

秦野悦子(白百合女子大学教授)
児童文化学科発達心理学専攻。専門は、発達心理学(言語発達、障害児のコンサルテーション、子育て支援)。臨床発達心理士。その他、日本発達心理学会常任理事、日本保育学会保育臨床相談システム検討委員、臨床発達心理士実践研究編集委員、一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構事務局長を務める。2006年より、わかふじ幼稚園副園長となる。三児の母。

親子関係と子どもの性格

幼児期や児童期にかけては、子どもの生活そのものが親に依存する部分が大きいため、どうしても子どもにとって親からの影響は大きくなります。子どもは親子関係のなかで、どのような性格をつくり出していくのでしょうか。親がやってしまいがちな誤りの代表的な例を見てみましょう。

・「支配」しすぎると無気力に

支配というと、親が子どもにあれこれと口うるさく指示・命令するというイメージがありますが、そうした”怖い”支配だけでなく、しょうとしすぎると、言うことをよくきく”いい子”にはなりますが、自分から何かをしようという自発性に乏しい性格になっていきます。

・「服従」すると乱暴者に

子どもを大切に思うあまり、その願いをなんでも叶えてあげようとする親がいます。ところが、叱られるべきときに叱られず、ガマンすべきときにガマンをさせられずに育った子は、自分は何でも許される特別な存在だという万能感を抱きやすく、家庭のなかで小さな暴君となっていきます。

やがて公園、幼稚園、小学校などで社会生活を送る必要が出たときに、物を貸し借りする、順番を守る、仲直りするなど、他人と調和的にかかわるというコミュニケーションの面で、苦労することになるでしょう。

・「拒否」すると卑屈に

積極的に子どもを拒絶する親は少ないでしょうが、家事に追われて子どもの語りかけに生返事をしたり、きょうだいと比べるなども、「拒否」の一種です。

拒否された子は劣等感の強い性格となり、自分を大切にする”自尊感情”が育ちにくくなるので、他人に対して被害感情が高くなり、意固地な性格、攻撃的な性格として、学校生活や家庭生活に適応しにくい特性を顕著にしていきます。

・「保護」しすぎると依存的に

毎日着ていく洋服を決めたり、食べやすいように魚は骨をとってほぐして出すなど、基本は”子どものため”を思っての行動ですが、子ども自身ができることを親が肩代わりして行なったり、新しいことに挑戦させないのは「保護」のしすぎです。

一見、情緒的に安定した性格に育ちますが、親に決めてもらわなければ何もできなくなるほど依存的性格を強め、次第に親にとって負担感が増えてきます。