やられっぱなしの子が心配~子育ての悩みQ&A

小川圭子

優しくおとなしい性格で、友だちに叩かれてもやり返したりできない子どもに、「やられたら、やり返す」と教えていいのでしょうか。『「育てにくい子」に不安を感じたときの子育て』(小川圭子著)よりご紹介します。

※本稿は、小川圭子著『「育てにくい子」に不安を感じたときの子育て』(PHP研究所)より、内容の一部を抜粋・編集したものです。

小川圭子(おがわ・けいこ/国際助産師)
国際助産師。助産師として勤務後、インドのマザー・テレサを訪ね、現地の「孤児院」や「死を待つ人の家」でのボランティア活動に参加する。その体験をきっかけに国際協力に関心をもち、青年海外協力隊に参加。アフリカやアジアの国々で、母子保健専門家や健康管理員、国際緊急援助隊医療チームなどとして約10年、国際協力活動に従事。現在は「助産院いのち輝かせ屋」代表ほか、大学講師、障がい者支援、子育て支援活動や講演などで活躍中。著書に『子育てに困ったママを救う本』(成美堂出版)がある。

お友達に叩かれてしまった…

Q.幼稚園に通う息子は優しくおとなしい性格で、お友だちに叩かれてもやり返したり、怒ったり、先生に言ったりすることができません。されるがままなので、お友だちもふざけてますます息子が叩かれたりするようになっています。男の子だし、かわいそうだし、「やられたらやり返しておいで」と教えた方がいいのでしょうか?

A. 息子さんは、叩かれても叩き返さず、怒らず、ガマンする優しい子どもなのですね。親としては、子どもが叩かれてやられっぱなしの様子を見ているのは心が痛み、なんとかしてあげたいと思いますよね。

「やられたらやり返してもいいんだ」とか「やられたら倍返しだ」という言葉をよく耳にしますが、私はその言葉に強い違和感を感じています。

子ども同士のけんかといっても、ときには大ケガにつながることもあります。手を出すことを大人が助長するのはおすすめできません。

「叩き返せばいい」という考え方を子どもに伝えるのは、暴力の連鎖にもつながると思います。

子どもを信じて見守る

叩いたりする子どもは、力で人を自分の思い通りにさせたり、自分のほしいものを得ることができるため、一時的には得をしているように感じられるかもしれません。

ですが、長い目で見れば、みんなに嫌われたり、避けられたりして相手にされなくなるでしょう。コミュニケーション能力という点でも決してうまく人と関われているとは言えず、本当に仲のいい友だちを作ることもむずかしいと思います。

親として、今はとてももどかしい気持ちでしょうが、幼稚園の先生とも連携し、「叩くことはいけないこと」「叩かれても叩き返すのはいけないこと」という基本をしっかり教えましょう。子どもを信じて見守ってほしいと思います。

弱いからやり返せないんだという人がいるかもしれません。ですが「やり返さない」と自分で決めたことを実行できる心をもっている子どもこそが、本当に強い子どもなのだと私は思います。

叩いたり、暴力で無理やり言うことを聞かせるような表面的な強さではなく、自分の軸をしっかりもち、自分が決めたこと、信じていることを実行していける、そんな心の強さが小さいときから育めればいいですね。