左ききは右に矯正した方がいいの?~子育ての悩みQ&A
3歳の娘の気になる「左きき」。小さいうちに矯正したほうがいいのでしょうか。 『「育てにくい子」に不安を感じたときの子育て』(小川圭子著)よりご紹介します。
※本稿は、小川圭子著『「育てにくい子」に不安を感じたときの子育て』(PHP研究所)より、内容の一部を抜粋・編集したものです。
小川圭子(おがわ・けいこ/国際助産師)
国際助産師。助産師として勤務後、インドのマザー・テレサを訪ね、現地の「孤児院」や「死を待つ人の家」でのボランティア活動に参加する。その体験をきっかけに国際協力に関心をもち、青年海外協力隊に参加。アフリカやアジアの国々で、母子保健専門家や健康管理員、国際緊急援助隊医療チームなどとして約10年、国際協力活動に従事。現在は「助産院いのち輝かせ屋」代表ほか、大学講師、障がい者支援、子育て支援活動や講演などで活躍中。著書に『子育てに困ったママを救う本』(成美堂出版)がある。
左ききは矯正した方がいい?
Q.もうすぐ3歳になる娘は「左きき」です。右手でスプーンをもたせても、自分で左手にもち替えて食べています。
「左ききは不便なことが多いから、早いうちに矯正した方がいいよ」と祖父母は言います。無理やりの矯正で、少食になったり、ストレスを感じたりしないかな? と心配です。
A. 少し前までは、日本でも海外でも、「左ききは不便だし、苦労する」「みんなと違うからいじめられやすい」という考えや独自の文化があり、強引な矯正が行なわれることも多かったようです。
そのなごりから、年配の方のなかには、「左ききは矯正した方がいい」と思う方もおられることでしょう。子育ての先輩であるおじいちゃん、おばあちゃんに言われるのはつらいですね。
ですが、無理やりの矯正は、子どもにストレスかも、と考えているお母さん、子どもの心を第一に考える姿勢が素晴らしいと思いました。
たしかに、文房具や家電、水道の蛇口、自動改札機など、世のなかの多くのものは、右ききを想定して作られています。そのため、左ききの人は日常生活でさまざまな不便を感じることもあることでしょう。
今では、左きき用の商品も開発されるようになってきましたし、少しずつですが、不便さや偏見も減ってきています。
脳科学で「無理に矯正しないほうがいい」
さらに、近年では脳科学などさまざまな分野でも研究が進み、「左ききは、無理に矯正しない方がいい」という考え方が一般的になってきました。
人間の脳は右脳と左脳にわかれていて、右脳はイメージやひらめき、直感、音楽感覚や空間構成、芸術性、創造力に、左脳は論理的な思考や計算、分析、判断力などに優れていることが明らかになっています。
そして、左ききの人は、右脳の働きが活発で、普通の人では思い浮かばないアイデアやセンス、独創性を発揮する、とも言われています。また、右ききの人よりIQが高い傾向にあるという研究結果も。
アインシュタインやレオナルド・ダ・ヴィンチ、モーツァルト、夏目漱石など、誰もが知っている偉人たちも左ききだったとか。最近の人では、ビル・ゲイツも左ききですね。
また、左ききは、スポーツの世界では、「ラッキーハンド」と呼ばれています。世のなかは、右ききの人が使用しやすいように想定されているため、左ききの人は環境に合わせようとして、幼い頃から自然に脳がトレーニングされやすい状態にあるのかもしれません。
ほかにも、左ききと右ききの脳は違っていて、左ききの脳の方が、左右差が少ないと言われたり、脳にダメージを受けた場合も、個人差はありますが、左ききの人の方が回復が早いと言われたりしています。
実際、左ききの人でも、左手ばかりを使うとはかぎらないようです。たとえば、駅の自動改札機は身体の右側にタッチ面があるので、左ききでも自然に右手でタッチしている人が多いそうです。