脳の成長から考える「年齢別の叱り方」【0歳から10歳まで】

林成之

「相手の脳に入る、つまり相手の気持ちになって話すこと」。これが「教育」の原点です。親は自分を基準に「あれはいけない」「これはいけない」と叱ってはいけないのです。「この子は自分で育っていく力がある」ということを前提に育てていってください。

※本稿は、『PHPのびのび子育て』2014年3月号より、内容の一部を抜粋・編集したものです。

林成之(日本大学大学院総合科学研究科名誉教授)
日本大学医学部、同大学院医学研究科博士課程修了後、マイアミ大学医学部脳神経外科、同大学救命救急センターに留学。日本大学医学部付属板橋病院救命救急センター部長に就任後、救急患者の治療に取り組み、数々の画期的な治療法を開発して大きな成果をあげる。なかでも多くの脳死寸前の患者の生命を救った脳低温療法は、世界にその名を知られる大発見となった。

【0~3歳】「ダメ!」を減らし、「すごいね」を増やそう

命に関わる危険な行為はしっかり叱る必要がありますが、それ以外に「ダメ!」は必要ありません。失敗したときも叱るのではなく、がんばったこと、できるようになったことを「すごいね」とほめてやりましょう。

また神経細胞がどんどん増える時期ですので、この年齢の子は教えたことをすぐに忘れてしまいます。「1回言ったのにどうしてわからないの!?」は禁句です。「こうだからいけないのよ」と根気良く、丁寧に、心を込めて何回も繰り返し教えていくことが大切です。

【3~7歳】ガミガミを「あなたはどう思う?」に変換しよう

良い神経回路を形成していくためにも、叱る際はガミガミと感情的に叱らず、子どもの言葉をまずは「そうだよね」と受け入れてから、「お母さんも小さい頃にこんな失敗があって、こうしたらできるようになったのよ」などと事例を示したうえで「あなたはどう思う?」と聞くようにします。

大切なのは「心をつなげる会話」です。間をおかずに「じゃあ、これはどうなの?」「お母さんはこう思うけれど、どう?」とポンポン質問し、心をつなげる会話で導いていくようにしましょう。

【7~10歳】「指示」よりも「提示」しよう

この時期は自己報酬神経群の働きが活発になり、「自分で決めたことを自分で達成したい」気持ちが強くなります。自主性・主体性を持ったときに喜びを感じるようにもなるため、それを削ぐような頭ごなしの命令・指示・叱り方はNGです。

自らがんばっていることは「すごいね」とほめ、失敗やできないことなどに対しては「こういうやり方とこういうやり方があるけれど、どっちを選ぶ?」と提示し、子どもが自分から「こうする」と決められるように導いてやりましょう。

≪column≫ 脳に手遅れはありません!

10歳以降であっても子どもの脳の力は高めていくことができます。その際の1番のポイントは「興味を持つ」「好きになる」ことを増やしていくことです。

脳には「好き」「興味がある」というレッテルが貼られた情報に対して理解力や思考力を発揮するという仕組みがあります。

ですから子どもが興味・関心を持てるような環境を整えたり、「あ、そうだよね!」「へえ、なるほど!」という共感の会話を習慣にしたり、あなた自身が楽しんでいるところを見せるなどして、好きになるもの、興味が持てるものをどんどん増やしてやりましょう。