姿勢がよくなると勉強もスポーツもぐんぐん伸びる理由

林成之

「姿勢をよくしなさい!」と注意するお母さん!そもそもなぜ姿勢をよくしなければいけないのか、その理由をご存知ですか?

※本稿は、林成之著『ちゃんと集中できる子の脳は10歳までに決まる』(PHP研究所)より、内容の一部を抜粋・編集したものです。

林成之(日本大学大学院総合科学研究科名誉教授)
日本大学医学部、同大学院医学研究科博士課程修了後、マイアミ大学医学部脳神経外科、同大学救命救急センターに留学。日本大学医学部付属板橋病院救命救急センター部長に就任後、救急患者の治療に取り組み、数々の画期的な治療法を開発して大きな成果をあげる。なかでも多くの脳死寸前の患者の生命を救った脳低温療法は、世界にその名を知られる大発見となった。

姿勢がよいと物事を正確に理解できる

「姿勢をよくしなさい」「背筋を伸ばしなさい」ということは、よく言われます。皆さんも、子どもの頃にうるさく言われた経験があることでしょう。また、お子さんにも「姿勢をよくしなさい」「背中が曲がってるよ」と、たびたび注意されているのではないでしょうか。

けれども、なぜ姿勢をよくしなければいけないのか、その理由を知っている方は少ないのではないかと思います。

姿勢が美しいと見た目もよくなります。しかし、それだけが姿勢をよくする理由ではありません。

姿勢が崩れてくると、体のバランスが崩れて、物事を正確に理解したり、集中して話を聞いたりすることができなくなるのです。

体のバランスと関係しているのは小脳にある「虫部(ちゅうぶ)」という場所で、脳はこの場所でバランスをとりながら、体の位置、目・耳などから入ってくる情報を判断しています。

姿勢が悪いと体軸が傾きますから、目線も傾きます。目線が傾くと左右の目から入ってきた情報にズレが生じ、脳は左右の情報をひとつにまとめる作業が必要になります。こめため脳は疲れやすくなり、集中力を高めてゆくことが難しくなります。

その結果、脳のパフォーマンスを落として、運動面や学習面はもとより、あらゆる場面でカを発揮できなくなっていきます。美しく正しい姿勢は、子どもの能力の向上に関係してくる大事な要素のひとつなのです。

超一流と言われている人たちの姿勢が、概して美しいことからもそれはわかります。とくにアスリートと呼ばれている人たちで姿勢が悪い人はいません。

スポーツにおいて、目線が傾き、入ってくる情報にズレが生じることは体を動かすタイミングにも影響します。ですから超一流の選手は立ち姿も歩く姿も美しいのです。