「痛い目にあう経験」を、子どもから奪っていませんか?
困っている子どもに、つい手を貸したくなるのも親心。でもそれって、本当に子どものためになっていますか? 家庭教育支援センター・ペアレンツキャンプ代表理事の水野達朗氏が、子どものためになる教育について紹介します。
※本稿は水野達朗著『子どもには、どんどん失敗させなさい』(PHP研究所)から一部抜粋・編集したものです。
水野達朗(家庭教育アドバイザー、不登校復学支援専門のカウンセラー)
不登校専門の訪問カウンセラーとして多くの不登校の子どもたちと関わり復学へと導く。不登校の解決法として家族内コミュニケーションの在り方に着目し、水野式の家庭教育メソッドである「PCM(=ParentsCounselingMind)」を構築。家族と子どもの自立を第一に考え、全国の親と子をサポート。
目先のかわいそうよりも、将来的なかわいそうに目を向けて
子どもが大切にしていたぬいぐるみがいつもの置き場にないとします。「お母さん、ぬいぐるみ知らない?」とお母さんに聞いてきました。実はお母さんは、朝のそうじの時に子ども部屋の机の下に転がっていたのを知っています。こういう時、あなたならどうするでしょうか。
2020年から実施される『新学習指導要領』のポイントである「生きる力を育む」ことを目指すならば、「ぬいぐるみ? うーん。今日は見ていないなあ」と、知っていてもあえて知らないふりをすることをおすすめします。
「机の下にあったよ」や「ほらここにあるじゃないの。だからちゃんとお片づけしなさいっていってるでしょ」などはいわない。
なぜかというと、お母さんがすぐに正解をいってしまうと、ものがなくなった際、自分で一生懸命探す前にすぐに親に頼る子になりやすいからです。
大好きなぬいぐるみをなくしてしまった時に苦労しながら探してやっと見つかり、「二度とこんな思いをしたくないから置き場所を決めよう」と子ども自ら考えたり、どうしても見つからなくて困る経験をしたほうが、子どもの問題解決能力は培われます。
どうしても「一緒に探して」とお願いをしてきたら、お母さんは探すふりをするだけ。お母さんは気づかないふりをしつつ、「お母さんはリビングを見てあげるからあなたは自分の部屋を見てごらん」と誘導するにとどめましょう。すると発見するという経験を積ませることにもつながります。
大切にしているものがなくなって悲しんでいる子どもを見ると、親としてかわいそうだと感じるのはよくわかります。いますぐに「ここにあるよ」と教えてあげたり、なくしたものを新しく購入してやりたいものです。
しかしながら、この目先のかわいそうを優先してしまうと、ものをなくさないための術を自分なりに見つけたり、どうすれば探しものが見つかるかということを学べません。
目先のかわいそうを優先しすぎるあまりに、将来的にもっとかわいそうな状況をつくりだしているともいえるのです
せっかくなのでもうひとつ例をあげてみましょう。
家庭内のルールで、「ゲームは1日1時間まで。それを破ったらペナルティで翌日はゲーム禁止」というのがあるとします。子どもがルールを破ってしまい、親は子にペナルティを科すことになりました。
しかし、翌日、子どもは涙ながらにお母さんに「お願い! どうしてもゲームがしたい!」とお願いをしてきました。皆さんはどうすれば子どもの自立につながると考えますか。
私は、子どもが何をいってきても最初に決めたルール通りペナルティを科し、子どもに「ルールを守らないとつまらない。目先の欲に流されたら損をする」という不利益をこうむらせ、痛い目にあう体験をさせるほうがよいと考えています。
子どもが大きくなり、社会に出れば自分で自分を律する力が求められます。
「ゲームができずに泣いているのはかわいそう」ではなく、「ここでルールをないがしろにして、ガマンを経験できないことのほうがかわいそう」という、将来的なかわいそうを考えられる親御さんなら、子どもを自立に導いていけることでしょう。
子どもには、どんどん失敗させなさい(PHP研究所)
わが子が、たくましく、希望に向かって進んでいくために親がすべきことを、家庭教育現場の事例や心理学、そしてイラストを使ってわかりやすく紹介。がんじがらめの古い子育てから抜け出し、楽しめる子育てにアップデートしませんか。