傷つけずにビシッと言う!子どもを叱る3つの ポイント

荻野ゆう子

ビシッと叱るときも、子どもの心を傷つけないようにしたいですね。『子どもを傷つける言い方・追いつめる叱り方』より、そのコツをご紹介します。

※本記事は荻野ゆう子著『子どもを傷つける言い方・追いつめる叱り方』(PHP研究所刊)より一部抜粋・編集したものです。

荻野ゆう子(教育・心理カウンセラー)
立教大学文学部心理学科卒業。子ども家庭教育フォーラム・チームカウンセラー。文京学院大学・生涯学習センター講師。日本精神衛生学会理事。NPO法人「保育ネットワーク・ミルク」理事。 不登校・就職拒否など人間関係にとまどう思春期・青年期の子どもたち、家族との出会いを通して、気持ちを汲みとりあう関わりの大切さを感じ、その思いをリアルな言葉で伝えている。

子どもを傷つけない3つのポイント

自分のいたらなさと向きあってこそのビシッと言葉

ビシッと言うときに、子どもの心を傷つけないためには、3つのポイントがあります。

・子どもの話に耳を傾け、気持ちを汲みとる

ビシッと言葉とはいえ、コミュニケーションです。親からの一方通行で終わらせるのではなく、「子どもはいったいどんな気持ちなのかしら?」と、子どもから返ってくる言葉に耳を傾けることが大切です。

“キャッチボール”と言われるように、双方向のやりとりが必要です。双方向とは、「売り言葉に買い言葉」ということではありません。おたがいに、相手を察する働きがあって双方向になるのです。

つまり、子どものほうも、お母さんに言い返したあとに、「お母さんは、いまどんな気持ちなのかな?」と気になっているものです。言いっ放しにせずに、察しあうことで、おたがいの気持ちが伝わるのです。

親は、言い返した子どもの気持ちを汲みとる努力をしないと、自分の言葉もなかなか子どもの心に伝わりません。気持ちを汲みとることが子どもと向きあう、わかりあうことにつながっていきます。

・自分のいたらなさと向きあう

親にも、子ども時代がありまlす。

「そういえば、わたしも朝はなかなか起きられなかった」
「宿題をやらずに遊んで、よく親に叱られた」
「忘れ物が多いのは、おとなになったいまでも直らない」

子どもへの言葉づかいや関わりに不安になったら、自分も同じように言われてきたことを思い起こしてみてください。子どもを追いつめる言 い方に、ふんばりがきいてくるものです。たとえ親となっても、弱点やもろさを抱えているのが人です。

またそれが、その人らしさにもなります。完壁になることはできません。むしろ、デコボコした自分を受け入れていくか、許していくかが、子どもの育ちには大切です。

だから、親や先生に言われていたことで、いまでもいたらない自分がいることを開き直ることなく、受け入れることが大切です。 それを子どもに勇気を出して話してみるのもいいですね。

たとえば、「『人の話はちゃんと聞きなさい』っていうけど、お母さんも、いまでも○○ちゃん(子ども)から『わたしの話、聞いてなかったでしょ?』って言われてしまうものね」と、素直に言えたらいいですね。

言葉にしないとしても、自分の子ども時代を思い返せば、子どもの気持ちを察する言 葉をかけられるようになります。子どもの気持ちを察しながらの言葉がけは、子どもの素直さを引き出すきっかけにもなります。

・枕詞をつけて、予告をしてから叱る

ビシッと言う前に、「少し厳しいことを言うよ」「ちょっと嫌な気分にさせるかもしれないんだけど」と枕詞のように前置きをすると、感情的になった自分の気持ちをしずめることができます。

こうした前置きは、相手に伝えているようですが、じつは自分のために必要な言葉なのです。 前置きもなく、感情に任せて叱ると、子どもも感情的に反発したくなります。

でも、枕詞を入れることによって、子どもも「あっ、なにか大事なことを言われるんだな」と心構えができ、心して聞こうと思うようになります。

感情的になると、言いたいことが相手に伝わりにくくなります。大事なことは間をとって、感情を抑えてから伝えれば、子どもも受け止めやすくなります。ビシッと言葉は、感情に任せたものではなく、子どもの心に届ける言葉ということを、いま一度心 にとどめましょう。

子どもを傷つける言い方・追いつめる叱り方
親の一方通行の思いが、子どもを苦しませてしまいます。「早く!」「○○しなさい!」と言わずに「ビシッと」効く言い方を、ケース別にわかりやすくアドバイスしています。