太陽が消滅したら地球は45日で凍りつく…って起こったことがないのになぜ分かる?
もし太陽の光が消えたら何が起こるの?
ざっと計算したところでは、地球全体は45日以内にこおりつくだろう。太陽の熱がないと、地球は熱エネルギーを放散して失ってしまうからだ。
地球は太陽からエネルギーを取りこんでいるが、そのほとんどは海にたくわえられており、水深35メートルまでの平均海水温度は15度だ。
(それより深い海水にたくわえられている熱エネルギーは、計算に入れていない。というのも、太陽からの熱がなくなると、浅いところの海水にたくわえられた熱はどんどん放出され、しばらくは地球がこおりつくのをふせぐけれど、いったん海面が氷におおわれてしまうと、深い海にたくわえられている熱エネルギーが、地球がこおりつくのをふせぐことはできなくなるから)
そのため、陸地は海よりもずっと早くにこおりつくだろう。でも、海も陸地の影響を受けて、どんどんひえていく。海上の空気──陸地よりもあたたかい──がふくらみ、大陸からつめたい空気を取りこむ。海上の空気がつめたくなることで、水面はつめたくなる。
あたたかい水が上昇し、つめたい水が下にしずむため、水の循環が活性化する。水の大部分は、ゾッとするほどの寒さの夜に、年がら年中さらされることになる。
でも、どうしてそんなことがわかるの?
1815年、インドネシアのスンバワ島で、タンボラ山という火山が噴火した。過去1万年で最大級の噴火で、環境に甚大な影響をもたらした。大量の火山灰がはきだされ、太陽をさえぎったのだ!
これは、大気に冷却効果をもたらした。しかし、太陽の熱が地球から逃れる力も弱まったため(温室効果)、加熱効果も起きた。火山噴火による影響があまりに大きかったため、翌年の1816年は「夏のない年」で知られている。
その後しばらくは太陽光が25パーセント減り、世界の気温は0.7 度下がった。それほど大きな変化には思えないかもしれないが、深刻な食糧不足が起き、何千人もの人々が飢え死にした。
とはいえ、太陽光ががくんと減ったわりには、気温の低下はかなり小さかった。このことから、地球がこおりつくには45日以上かかるとも考えられる。また、大気がもたらす自然の温室効果や、海の変わらない温熱条件もあいまって、凍結にはさらに時間がかかるかもしれない。
でも、あわてないで。太陽は電球のようにパッと消えるわけではない。
太陽が光りかがやくのは、表面温度がおよそ5,500度あり、核──さらに熱く、およそ1,500万度──の内部で核融合が起きているから。たとえ核融合がいきなり止まったとしても、太陽は光を発しつづけるだろう。
台所のクッキングヒーターを地球と宇宙消しても、しばらく熱い状態が残るのと同じようにね。
言うまでもなく、太陽はどんなキッチン家電よりも大きくて熱いので、はるかに長いあいだ、熱や光を放射しつづけるだろう。
実際、太陽の核部分のエネルギーがぬけ切るには、数百万年という、とてつもなく長い時間がかかる。
もし、核融合が止まったら、何が起きるの?
太陽は、毎年少しずつ、つめたくなっていく。その過程太陽は収縮し、重力エネルギーを放出する。これにより太陽があたためられるため、冷却効果がいくぶんゆるめられる。そして、白色矮星となって輝きつづける。
なので、わたしたちの子孫が太陽の光が消えたと気づくのは、何百万年もたってからだろう。そしてありがたいことに、地球が太陽の光が切れるなんて実験にかけられることは、今後50億年はないだろう。
『どうしてオナラはくさいのかな? 人に聞けない!? ヘンテコ疑問に科学でこたえる! 』(評論社)
人間が月に降り立ったことを証明する方法は?」「どうして魚はオナラをするの?」――。不思議にあふれたこの世界で、ふと抱いた疑問。「友だちや先生には聞きづらいな」とそのままにしてませんか? そんな「ヘンテコ疑問」こそ科学のトビラを開くカギなのです。
【西川由紀子】
大阪府生まれ。神戸女学院大学文学部英文学科卒業、立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科修了。訳書に『理系アタマがぐんぐん育つ 科学の実験大図鑑』『理系アタマがぐんぐん育つ 科学のトビラを開く! 実験・観察大図鑑(』いずれも新星出版社)がある。
【千葉和義】
お茶の水女子大学理学部生物学科教授、サイエンス&エデュケーションセンターセンター長。生物学科の学生や大学院生たちと、ヒトデ卵の減数分裂と受精機構(発生生物学)を研究すると同時に、理科教育と科学コミュニケーションの振興活動に従事している。