6歳までに土台をつくろう!脳とこころは家庭で育つ

成田奈緒子

最後に大切な「こころの脳」が育つ

感情のコントロールも脳のはたらきであり、冷静に行動する力は、最後に身につきます。

幼児期には感情のままに行動する子どもも、その後、新しい脳が育って知識や記憶、経験がたくさん蓄積されると、少しずつ「考えて、行動する」ことができるようになってきます。これがこころの脳であり、「頭のいい子」「性格のいい子」とは、この脳がうまく育った子です。

例えば、「ケーキが食べたい! だからお姉ちゃんの分を横取りする!」 というのは、幼児にとっては当たり前の発想、行動です。でも、小学校高学年頃までには、「分け合う」という経験と知識が入ります。

そのため、「ケーキが食べたい! でも……」とその感情をいったん新しい脳に伝え、「お姉ちゃんもケーキが好きだから食べたいだろうな」と考えて、「半分こしようよ」と声かけ(行動)できるようになるのです。こころの脳は、心地よい人間関係を築くためには欠かせない脳力と言えるでしょう。

脳は繰り返しが好き

…刺激を繰り返し与えることが、脳の育ちには有効です。睡眠や食事のリズムを整え、親子での触れ合い、会話といった日常の生活を大切に繰り返しましょう。それが最終的なこころの脳の育ちを左右します。

子どもの脳とこころを育てるために大切な3つのこと

規則正しい生活習慣、楽しい触れ合い、何気ない言葉がけが、 子どもの生きていくために必要な力を育みます。

(1)幼児期はワイルドが正解!

毎日の生活において、「しっかり寝る」「だいたい同じ時刻に起きる」「きちんと3食食べる」「たくさん遊ぶ」を規則正しく繰り返して、脳に五感からの刺激をたくさん入れましょう。

5、6歳頃までに、夜は自然に眠くなり、朝はパッと目が覚め、日中はからだをたくさん動かし、きちんと空腹を感じる。そんな子どもになっていれば、多少わがままでもワイルドでも大丈夫!脳の土台がしっかりできているので、あと10年後には「頭のいい子」「性格のいい子」に育つはずです。

手がかかっても周りと比べずに、「脳がよく育っているね!」と笑顔で抱きしめられるようなお母さんでいましょう。

(2)親子の触れ合いで刺激を与える

新しい脳は1歳頃から育ち始めます。この時期には、大人といっぱい触れ合い、言葉を交わすことが大切です。刺激が繰り返したくさん入れば、そのあとに成長する、こころの脳の育ちがよくなります。

できるだけテレビやスマートフォンなどは遠ざけて、親子で向かい合いましょう。子どもにはきちんとした文章で語りかけるようにし、遊ぶときには、親も手足をたくさん動かしてからだを触れ合わせるようにすると効果的です。

幼児期には、じっと座ってお勉強ができる子より、好奇心旺盛で見るもの、聞くものすべてを知りたがり、触りたがる子のほうが、脳はよく育っているのです。

(3)論理思考の土台をつくる

勉強も、思いやりも論理思考が土台となります。最終的に完成するのは18歳頃ですが、幼児期から周りの大人が、論理的に考えるとはどういうことかを伝えていくことが大事です。

たとえば、「おまんじゅうが2つあるから、4人で半分ずつ食べるとちょうどいいね」「パパが喜ぶから、駅までお迎えに行こうか」などと、理由を含め行動をきちんとした文章にして伝えるように心がけると、子どもの脳に論理思考の土台をつくれます。

また、子どもが飲み物を欲しがったときは、「ジュース」だけではなく、「ジュースちょうだい」などと文章にして言わせましょう。幼児期から意思を文章で正確に伝えさせる習慣をつけるのも、論理思考を身につけさせるには有効だからです。