6歳までに土台をつくろう!脳とこころは家庭で育つ

成田奈緒子

子どもの脳は、どのように成長していくのでしょうか。 幼児期は、脳の成長に合わせたかかわり方をすることが、とても大事になります。

※本稿は、『のびのび子育て』2015年12月号から一部を抜粋し、編集したものです。

成田奈緒子(なりた・なおこ/文教大学教授・小児科医)
神戸大学医学部卒業。米国セントルイス・ワシントン大学医学部へ留学後、筑波大学基礎医学系講師などを経て現職。子どもの脳の発達に合わせた育児論に定評がある。『早起きリズムで脳を育てる』(芽ばえ社)他著書多数。

子どもはゆっくりと成長する

子どもの脳は、生まれたあと18歳頃までの時間をかけて、言うなれば「動物から人間へ」段階的にゆっくりと成長していきます。

5、6歳までの時期は、動物としての古い脳、つまり生命維持に必要な脳の働きをしっかり育てることが肝心です。

そして小学生以降に、勉強や集団活動を通して、古い脳の土台の上に新しい脳、つまり「自分で考え」「自分で行動し」「人を思いやることができ」「逆境にもめげない」人間らしい脳を積み重ねていきます。

ですから、幼児なのに極端にお利口さんだったり、聞き分けがよすぎたりすることは、脳の発達としてはバランスが悪いとも言えるのです。

「結果」を急ぎすぎない

乳幼児期に心がけたいのは、きちんとした生活習慣で、まず優先して古い脳を育てることです。その上で、「お勉強」ではなく、親子でのたくさんの触れ合いや会話を通して、新しい脳を育てていくことです。

たとえ幼児期に、その「結果」が出ていないように見えても、焦ることはありません。土台がしっかりした脳を持つ子は、中高生になる頃には驚くほどバランスが取れた「頭がよくて性格もよい」子に育つものなのです。

古い脳×新しい脳=こころの脳

古い脳:脳幹や間脳など脳の芯に当たる部分。呼吸・睡眠・食欲など生きるための基本機能を担う。

新しい脳:大脳皮質、つまり頭脳を司る部分。言語、手指の微細運動や学習を担う。

これら2つの脳がつながってシナプスをつくると、人として必要な、”こころの脳”が育つ!

「いい子」でないのは土台を作っている証拠

古い脳は「動物の脳」です。生まれたときには未熟であるこの脳は、お日様のリズムや、食事や入浴といった毎日の生活からの刺激が繰り返し規則正しく入ることで、5歳頃までに育ちます。

古い脳がしっかり育った子は、「寝る・起きる・食べる・からだを動かす」が自律的にできます。また「やりたいことはやる!」「食べたいものは食べる!」と動物の本能で主張するので、お母さんとしては手を焼くことが多いかもしれません。

でも、小学校入学後は学習やスポーツをたくさん行なうことで刺激が入り、古い脳の土台の上に、お利口さん脳である新しい脳が育っていきます。

ですから幼児期に古い脳がよりよくつくられていることが望ましいのです。 聞き分けのない一見「いい子」じゃない子は、実は、年齢相応の古い脳がしっかり育っている子、と考えていいのです。

古い脳、新しい脳への刺激の与え方

…古い脳への刺激は、大人が子どもを見つめて、言葉を聴かせて、触ることで五感から入ります。一方、新しい脳への刺激は、子どもが自発的に言葉を発し、手足を動かすようなかかわりを大人がすることで与えられます。