せっかく中学受験を突破したのに…子どものありのままを受け止める大切さ
ありのままの子どもを受け入れることは非常に大切なことです。しかし、なかなか難しいことでもあります。親の欲目などともいいますが、どうしても親は子どもに期待をしますし、こうあってほしいと望みすぎたりします。
子どもの現実の姿を受け入れる代わりに、もっとこうあってほしいと思う姿を強要します。
※本記事は、河井英子著『子どもの心を”荒らす親”・”整える親”』(PHP研究所)より、一部を抜粋編集したものです。
河井英子(武蔵丘短期大学教授)
東京都内の教育委員会教育相談室で長年相談員を務め、現職。子どもの心をテーマにした健康の心理学、発達と学習の心理学が専門。
ありのままの子どもを受けとめていますか?
子どもは、親のそういう態度を敏感に感じ取ってしまいます。もしも自分が親の期待にそむいたら、親からの愛を失ってしまうのではないかという、大きな不安を抱いています。
そのため、子どもはありのままの自分を認めず、親の気持ちを先取りしたかたちで自分を偽り、いい子の自分を演じようとしたり、自分はいい子であると信じようとします。そのような無理から生じる子どものさまざまな問題行動、すなわち「荒れ」があることを知らなければなりません。
小学校のとき、中学受験を目指して親の言うままに塾に通い、親子一体で頑張った子どもが、念願かなって入学したはずの中学校なのに、突然通えなくなってしまった例がありました。家の中で暴れて、特にお母さんには、刃物を投げつけたりするような乱暴をはたらくようになってしまったのです。
無理して頑張っていた緊張の糸がついにきれてしまったということでしょう。”親の言うことを聞く、素直で優等生の自慢の子”を演じていることに疲れ果ててしまったと思われます。
本当は、「もっと友だちと遊びたい」「もっと自由な時間がほしい」「塾に行きたくない」「受験なんてしたくない」などと思っていたのではないでしょうか。お母さんには、子どものそういうありのままの姿を受け入れる必要があったのです。
この事例では、お母さんが自分の欲目に気づき、子どもが本当の自分を受け入れて立ち直るために、多くの時間と周りからの支えを必要としました。今さら遅いということにならないために、子どもの気持ちをしっかり見つめていきたいものです。
子どもの心を”荒らす親”・”整える親”(PHP研究所)
子どもが荒れる原因を探ることは、子どもを取り巻く環境や、発達の正しい筋道を改めて見直してみることかもしれません。わが子を荒れた子にしないために、やってはいけない「叱り方・ほめ方・接し方」を紹介します。子どもの発達に合わせて適切な子育てをすれば、子どもの心は自然と整います。