幼児期が大切!「聞く力」で伸びる 7つの能力

河井英子

「話が聞ける子」は、さまざまな能力を身につけることができます。 最近の子どもの傾向と、「聞く力」がどんな能力を伸ばすのかを考えてみましょう。

※本記事は、『PHPのびのび子育て』2016年5月号より、一部を抜粋編集したものです。

河井英子(武蔵丘短期大学教授)
東京都内の教育委員会教育相談室で長年相談員を務め、現職。子どもの心をテーマにした健康の心理学、発達と学習の心理学が専門。

なぜ 「話が聞けない子」が 増えたの?

『聞く力』(阿川佐和子著/文藝春秋)という新書がベストセラーになり、大人の世界でも改めて「聞く力」が注目されました。 子育てにおいても、子どもたちの「聞く力」を育むことがいかに大事か考えてみる必要があります。

最近の子どもたちは、人の話が「聞けない」「聞かない」ので困ると嘆かれています。まず、なぜ「聞けない子ども」が増えてきたのか、その理由を3つにまとめました。

【話が聞けない理由1】「聞くこと」より「話すこと」のほうが 重視されている

1つめは、「話すこと」が重視されすぎてきた結果です。親は子どもに「黙っていないで、何とか言いなさい!」「話さなければわからないじゃないの」「いったい何を考えているの?」などと言い続けてきました。

しっかりと自分の考えを述べることが大事で、いかに自己主張し、自己表現力を育てるかに関心を向けてきたのです。

「聞くこと」より「話すこと」が重視されてきたのです。 黙って聞いていることは価値あることではなく、話すことができないから黙っていると、とらえられかねないのです。

【話が聞けない理由2】心を惹かれる刺激が多く、周りのことに関心が向かない

2つめは、子どもたちの身の回りには、心を惹かれるたくさんの刺激があることです。たとえばゲームがあったり、さまざまな音楽や映像が流れています。スマートフォンやネットの世界も、もうすでに子どもの生活の中に入りこんでいるかもしれません。

それらは子どもの気持ちを強くとらえ、子どもたちはすっかりのめりこんでいます。その結果、周りのことに、ほとんど関心が向けられなくなってしまっています。そんな子どもたちが、とても増えているように思います。それでは、お母さんの言葉さえ、なかなか耳に届きません。

【話が聞けない理由3】命令や指示ばかりで、言葉に魅力がない

3つめは、子どもにかける言葉そのものに魅力がないことです。特にお母さんの発する言葉は、ほとんどが「早く!」「〇〇しなさい」「だめでしょ!」などの命令語や指示語です。子どもにとって魅力のある、耳を傾けさせるような言葉でないことが多いのではないでしょうか。

子どもが耳を傾けて聞こうとするような言葉かけを工夫する必要があります。そのためにはお母さんの気ぜわしい気持ちを少しわきにおいて、じっくりと子どもの目を見つめながらの語りかけと、ゆとりある態度が求められます。