親が選ぶ言葉で子どもはどう変わる?

shizu

親が毎日、何気なく口にしている言葉は、子どもにどんな影響を及ぼすのでしょうか。言葉がけに詳しい先生に、わかりやすく解説していただきました。

※本稿は、『PHPのびのび子育て』2020年11月号特集「子どもがぐんぐん伸びる
親の「口ぐせ」」より、一部を抜粋・編集したものです。

shizu(ASD発達支援アドバイザー)
親子で場面緘黙の経験を持ち、長男が3歳でASD(自閉スペクトラム症)と診断される。その子育て経験とASDの子どもへの訪問療育での学びから『発達障害の子どもを伸ばす魔法の言葉かけ』(講談社)を出版。20万部となる。他に、『「言葉かけ」ひとつで行動が変わる!子どもの叱り方・伝え方』(PHP研究所)、『発達障害の子と親の心が軽くなる ちゃんと伝わる言葉かけ』(KADOKAWA)、ブログ「発達障害の子どもを伸ばす魔法の言葉」。

親の口ぐせが、子どもの「思い込み」を作る

「何度言ったらわかるの!?」
「早くしなさい!」

思い通りにいかない子育てにイライラすることはありませんか? 家事も子育ても大変なのに、夫は仕事で遅いから頼れない……。他のママたちは、みんな上手に子育てしていそう。それに比べて私は怒ってばかり……。私はダメな母親だ……。

こんなふうに追い込まれている方もいらっしゃるかもしれません。毎日毎日、家事に子育てにてんてこまいのお母さんたち、本当におつかれさまです!誰もほめてくれませんから、自分で自分をねぎらってください。「よくやってるよ!」と。

悩みなんて全然なさそうに見えるお母さんたちもみんな、子育ての悩みを抱えているものです。悩んでいるのは、けっしてあなただけではありません!

今の時代は特に、核家族が多いため、親子が閉ざされた空間に置かれ、ストレスがたまりやすい環境になってしまっているかもしれません。一度ボタンのかけ違いが起きてしまうと、ますます悪化し、家庭に笑顔がなくなることも……。

実は、子どもの心や能力を伸ばし、あなた自身も笑顔になるためには、言葉がけは一番大切なことかもしれません。子どもにかけている言葉は、自分の心に無意識にかけている言葉となるからです。

親の言葉は「子どもの心」をどのように育む?

生まれたての赤ちゃんには、もちろん「思い込み」というものがまったくありません。しかし、育っていく過程でかけられた言葉によって、「自分に対する思い込み」を作っていきます。

「こんなこともできないの!?」
「何度も言ったでしょ!?」
「ダメな子ね!」

などと否定ばかりされてきた子は、どのような心を育むでしょうか。

「自分はダメな子だ」
「だから、怒られて当然」

おそらく、こういった思い込みをもつことになるでしょう。

また、子どもの行動すべてを管理しようとする、過干渉な親に育てられた場合は、「それじゃダメ! こっちにしなさい」などとコントロールされることがふつうになってしまいます。

そういう子は、「私は何もできない子だから、親の言う通りにしないといけない」と、いつもお母さんやお父さんが望むように行動し、我慢して、無理をする子ども(大人)になる傾向があります。

こうして、ついには生涯にわたって「マイナスの思考ぐせ」を定着させてしまうほど、親の言葉の影響は大きいのです。言葉には言霊があると言われています。

もし、一番身近である親からかけられた言葉が、子どもにとって心地よいものだとしたら、子どもの心はどのように育まれるでしょうか。

この世界は安心できる世界で、自分の存在が尊重されていると感じ、自己肯定感も高まることでしょう。と言っても、「いつも笑顔の、やさしいお母さんでいましょう」という意味ではありません。

人間には喜怒哀楽があります。怒りも大切な感情ですから、ときには怒ってしまっても大丈夫です。ただ、一日中怒っていて、子どもがいつもおびえて委縮しているとしたら、その言葉がけは別のものに置き換えたほうがいいでしょう。

本誌を手にとっているあなたは、「変わりたい」という思いをもった、とても子ども思いの親です。ぜひ、言葉がけのコツをつかんでもらえたらと思います。