「甘やかすと子どもの自立しなくなる」は本当? 親が安全基地になることの意味

内田伸子

「甘えさせる」というと、甘やかすことにならないか、子どもの自立を妨げるのではないか、などネガティブなイメージを持たれがちです。しかし、実際にはその逆。子どもに十分甘えさせて「安心・安全な環境」をつくることが、幼児期における親の役割です。(取材・文:鈴木裕子)

※本稿は『PHPのびのび子育て』2014年5月号から一部抜粋・編集したものです。

内田伸子(心理学者)
筑波大学常勤監事、十文字学園女子大学理事、同大学特任教授。お茶の水女子大学名誉教授。専門は発達心理学。ベネッセ「しまじろうパペット」の考案、NHK「おかあさんといっしょ」の番組開発などにも携わる。

だから甘えたい!甘えの構造サイクル

親に十分甘えられると自信がつき、自分の頭で自由に考え、想像の翼を広げられるようになります。そうした子どもの自由な言動をあなたがきちんと受け止めることで、さらに子どもは成長していけます。

子どもは、生まれてしばらくの間は「自分は何でもできる」という万能感のかたまり。つねにお母さんに守られ、困ることがないからです。

ところが、徐々に脳や体が発達し、歩行やおしゃべりが始まって外の世界と出合うと、何もかも初めてのことばかりで、不安でいっぱいに。

「すごく怖い! でも、やっぱり外へ出て行きたい…」というのが1~6歳の子どもの心理状態です。特に1歳半ぐらいで「自分はお母さんとは違う人間なんだ」という自我が芽生えてからは、未知の体験がしたくなります。

当然、怖い思いもしますし失敗もします。他人と衝突することもあるでしょう。そのとき、子どもに必要なのは、「いざというときはお母さんが守ってくれる」という安心感です。お母さんという、たっぷり甘えられる安全基地があってこそ、子どもはのびのび成長していけるのです。

成長を温かく見守ることが大事です

特に5歳くらいまでは脳が劇的に変化し、子どもの心は激しく揺れ動きます。そうした中、子どもが自分の頭で考え、行動できるようになるには、お母さんとの間に信頼関係が築けているかがとても重要。

親としては、わが子を心配するあまりに、先回りをして生き字引のように答えを与えたり、あるいは厳しくしつけたくなるかもしれません。でも、子どもの健やかな育ちには、子どもを信じて見守り、愛情を持ってたっぷり甘えさせる時間が不可欠なのです。

親は、揺れ動く子どもの心の声をしっかり聴き、受け止め、その子自身の進歩や成長を認めること。禁止や命令ではなく、ほめる・はげます・(視野を)ひろげるという「3H」の言葉をかけながら、子どもが成長するための足場をつくるようなつもりで、見守っていきましょう。

甘えさせ上手なお母さんになる3つの心得

1)禁止や命令の言葉を使わない

2)子どもの心の声を聴き、つまずきを見抜いてサポートする

3)伸びていくための「足場づくり」を意識する