親の押し付けでは育たない「子ども自身の強さ」とは?

内田伸子

人を押しのける我の強さではなく、自分に負けない、たくましさを育てるために、今、あなたがすべきことを一緒に考えていきましょう。(取材・文:鈴木裕子)

※本稿は『PHPのびのび子育て』2011年10月号から一部抜粋・編集したものです。

内田伸子(心理学者)
筑波大学常勤監事、十文字学園女子大学理事、同大学特任教授。お茶の水女子大学名誉教授。専門は発達心理学。ベネッセ「しまじろうパペット」の考案、NHK「おかあさんといっしょ」の番組開発などにも携わる。

お金こそすべて、という価値観が蔓延している

何があっても人生をゆたかに過ごしていける。そんな力の土台は今、つくっておきましょう。

むかしは、子育てというものはもっと自然なもので、親は特別に何をするということもなくのんびりと子どもにつきあっていました。ところが近年、子育てがせわしないものになっています。

その背景には、大人たちの「お金こそすべて」というような価値観、いい学校に入って一流企業に就職すればたくさんお金が稼げて幸せになれるといったような考え方があるのかもしれません。

そのせいか世の中には、読み書きは早くから始めたほうがいい、英語教育も赤ちゃんの頃から始めたほうがいい、などといった情報があふれています。それらを見聞きして、焦りを感じ、子どもにいい教育を受けさせようと、いわゆる”お受験”に躍起になる親も増えているようです。

自分で考え、判断し、行動する力を育もう

そうしたなか、親の焦りやプレッシャーは大きくなるばかり。それゆえ「子育ては親の役目。失敗したら大変」「子どもは厳しくしつけなければ」と思うあまりに自分自身の思いを子どもに押しつけてしまう方が多いようです。

しかし、それでは子どもの可能性を奪いかねません。たとえば早期教育も、子どもの成長の土台となる言語能力の発達を妨げるという結果が、さまざまな研究から得られています。

人間にとって大切なのは、自分自身の頭で考え、判断し、行動するということ。子どもが親の敷いたレールに乗っていい学校、いい会社に入ったとしても、そうした力が身についていなければ、たとえば先の東日本大震災のような出来事があったときに途方に暮れてしまうでしょう。

子どもの教育において必要なのは「即効性より、底力」。何があっても人生をゆたかに過ごしていけるような力——自分で考え、判断し、行動する力——を育むことを目標にして子どもと関わっていく姿勢が、あなたに求められているのです。