ガンコな個性を輝かせる親の心得

高橋愛子

ガンコにはいい面と悪い面の両方があります。頑なで人の言うことをきかないというのはガンコの悪い面。自分を曲げない部分が強い子の場合、親としては「将来、人間関係を壊してしまうようなガンコな大人になったら困る」という思いをもつかもしれません。

けれども、その子は信念や信条、また、「こうしたい」という自分の感性や思いなど、人生を生きていく上で大事な資質をもっていると言えます。ここはガンコのとてもいい面。

ガンコな子とは、こうしたいい面を生まれもってきた子なのです。信条をきちんともち行動する大人になっていきやすい子、信念のある強くて勇気のある子ですから、素晴らしい子なのです。この資質をぜひともいい方向に伸ばしていきましょう。

※本稿は『PHPのびのび子育て』2010年11月号から一部抜粋・編集したものです。

高橋愛子(家庭教育研究所代表)
家庭教育研究所代表。1938年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。3男1女の母親。カウンセラー、セラピスト、ファミリー・コンサルタントとして、企業や学校などで研修を行なう。2009年より全国の親子支援者と「安心親子応援団」を結成。著書に『頭がいい親の上手な叱り方』(コスモトゥーワン)など多数。

【親の心得1】個性をマイナスの目で見ない

なんでも親の言う通りにする子に比べて、ガンコな子は育てにくい面があるでしょう。そのため、ガンコを悪いこととして捉えてしまいがちです。しかし、「親の言うことをきかないし、自分の主張ばかり押し通す聞きわけのない子」という目で見ると、「あなたは本当にガンコで困る」というメッセージも子どもに伝わってしまいます。

すると、子どもは「自分はガンコな悪い子」という配線を頭の中で作り、自信がもてない子になってしまうのです。そして、ますます人の言うことをきかなくなるなど、ガンコの悪い面が大きくなる可能性もあります。

親自身の価値観や考え方で、ガンコをマイナスな資質と決めつけてしまうのは、「自分をしっかりもっている子」というせっかくの宝の資質をつぶしてしまいかねません。これはとてももったいないですね。

ですからガンコをマイナスの目で捉えないことが大切です。考え方をきちんともって気持ちを素直に伝えられる子というプラスの目で見てください。本来、ガンコな子は素晴らしい子なのですから。

【親の心得2】まず、子どもの気持ちを受け止める

ガンコな子は、自分で考え、自分で決めて行動するマイペース型が多く、自分をとても大事にしている子です。

こういう子に、「ああしなさい」と頭から命令したり、「ガンコだと大きくなってから困るよ!」などと叱ったり、脅したりすると、かえって頑なになります。「こうしてほしい」という親の気持ちを伝える時は、子どもが納得できるように伝えていくことが大事です。

いい・悪いという親自身の評価は横に置き、まずは子どものありのままの気持ちをよく聞いて、思いを受けとめましょう。あなたの言いたいことを伝えるのはその後。この順番が大切です。

「そんなことまで考えていたの。こう思ったからこうしたかったのね」と子どもの気持ちを噛み砕いて、温かい気持ちで受け入れ、「お母さんはこう思うけれど、あなたはどう思う?」と”私メッセージ”で伝えていく。

こうした対話を丁寧に繰り返して、子どもが十分に納得するような伝え方をしていきましょう。