「べつに、ふつう、わすれた」会話が成立しない子どもにどう接する?

玉居子泰子(たまいこ・やすこ)
 

たった10分の「かぞくかいぎ」で変化が

しばらくの間は、やっぱり子どもたちからの積極的な発言はほぼ出ません。でも親が、自分たちの仕事のことや、嬉しかったこと、がんばりたいことなどを、せっせと発表していると、子どもたちも慣れたのか、少しずつ発言が増えてきました。

息子「野球でいい当たりを打てて、嬉しかった」
娘「おばあちゃんにあいたい」
息子「ごはんのとき、妹ばっかり話をするからイヤだ」
娘「お兄ちゃんのこえが、うるさい」

そういい当たりだったよね。練習がんばってたよね。今度のお休みにおばあちゃんに会いに行こうね。あなたはどんな話がしたいの?お兄ちゃんは声が大きいよねぇ。

などと言いながら、盛り上がっても盛り上がらなくても、半年くらい続けていると、さらに不思議なことに、かぞくかいぎ以外の時間で、息子の発言が増えていきました。

私があれこれ質問しなくても、嫌なこと嬉しいこと、学校で起きたこと、野球で感じたことなどを、自分から自然に話してくれるようになったのです。

あれ? なんだかおしゃべりになったなあ。そう思ったのを覚えています。

大人に必要な態度とは

たった10分、落ち着いて、大人が「耳を傾ける」ことを始めるだけで、子どもが変わっていくのがわかりました。その息子の姿を見つめながら、だんだん、私はあることに気がつきました。

ああ、子どもって本当は、いろんな考えを持っているんだ。それをちゃんと聞いてあげる姿勢が親にあればいいだけなんだ、と。

やがて、他の家のかぞくかいぎを取材しながら、いいと思ったところは取り入れて、わが家のかぞくかいぎの形も少しずつ変化してきました。

うまくいったりいかなかったり。飽きたり、しばらく間が空いたり。相変わらず日常では、けんかをしたりを繰り返しながら。

それでも、かぞくかいぎに出会う前より、わが家の会話はずっと増えていったのです。


『子どもから話したくなる「かぞくかいぎ」の秘密』(白夜書房)
多くの家庭の「かぞくかいぎ」を取材し研究してきた著者が、「かぞくかいぎ」を経て変化してきた家族の実例を紹介。うまくいく「かぞくかいぎ」のコツもお伝えします。