発達障害? 人を傷つける「無神経な発言」をやめない子とどう向き合うか

村田しのぶ
2024.07.10 22:49 2023.05.16 11:50

言われたらイヤな気持ちになる言葉の教え方

男の子に注意する親

・相手の気持ちを考えず、すぐに口に出してしまう!

道を歩いているときに、子どもが何の悪気もなく、「あの人、太ってるね」と言ってしまうことがあります。同様に、友だちの描いた絵を見て「変な絵だなぁ」と言ってしまい、相手の子を怒らせたり、あるいは泣かせたりと、トラブルが絶えません。

当の本人は思ったことを素直に口に出しただけなので、どうしてトラブルになったのかがわからず、きょとんとしています。

このように、とくに発達障害の子どもの場合、「言われた相手の気持ちを想像する」ことがなかなかできないので、相手を傷つけてしまったり、怒らせてしまったりすることがしょっちゅうあります。

なぜ、言ってはいけないのか?

発達障害の子どもは、相手の表情を見て、その気持ちを推し量ることは苦手です。そこで、なぜ、その言葉がいけないのか、その理由を伝えることから始めます。

「ねぇ、太っている人がいて、気にしているとするでしょ。それなのに、『太ってる〜』と言われたら、その人はどう思うかな?」と話してみます。「きっと、悲しくなるでしょ。だったら、『太ってる』なんて言葉は言わないほうがいいよね」と伝えてあげることです。

相手がいやがる言葉、よくない言葉を教えていきます。

・言ってはいけない言葉は「見える化」する

発達障害&グレーゾーンの子どもが「1人でできる子」になる言葉のかけ方・伝え方

①怒った顔をしたり、声を荒げて言うのはNGです。「叱られている!」と思い、言葉が入っていきません。「静かな声で、穏やかに、ゆっくりと!」がコツです。そして相手の目を見て、短い言葉ではっきりと話します。

②文字が読める子どもには、言われてイヤな言葉をいくつか紙に書いて見せます。そして、「自分が言われたらイヤな気持ちになる言葉だな」と気づかせていきます。

(例)太ってる、頭が悪い、ブス、ばか、へた、のろま、足が短い、汚いなど。

③まだ文字の読めない子どもには「絵カード」を見せます!
「言われた子どもは、どんな気持ちになるかな?」と問いかけ、悲しそうな顔の表情の絵カードを見せて「泣いてるよ」と気づかせます。

「絵の中の子ども、泣いてる」と言えたら、「そうだね、よく気づいたね、今度からは言わないようにしようね」と話します。

(例)泣いてる、困ってる、怒ってる、悲しそう……などの絵、写真。

・すぐに謝れるように練習する

男の子に注意する親

相手を傷つけて、怒らせてしまったときは、「ごめんなさい」「もう言わないよ」という言葉がすぐに出るように、親子で練習していきます。

トラブルが発生したときの様子を思い出しながら、自分の言った言葉を振り返ります。

そして、「相手の子どもはどんな表情だったかなぁ?」「そのあと、どうなったかなぁ?」と絵カード(悲しそうな顔など)を見せ、文字で書きながら、思い出していきます。

「その言葉は言わないほうがよかった、悪いことをした」と思い返すことができたら、「相手の子に『ごめんなさい!』と謝ることが大切なんだ」と気づかせていきます。

「泣いちゃったら、なんて謝ればいいかな?」と子どもに聞いて、「ごめんなさい」と言う練習をします。「ごめんなさい」って言えたら、褒めます。

「もし逆に、自分がその立場だったらどう思う?」「その言葉を言われたら、どう感じる?」……と、何度もさまざまな場面を思い出しながら、練習をしていきます。

このような経験や練習を積んでいくうちに、「自分も言われたら、イヤだな」と徐々に相手の立場を理解できるようになり、ほかの人とうまくかかわれるようになっていきます。

村田しのぶ

秦野市就学指導教育支援員、公立小学校特別支援非常勤講師、保育所等訪問支援員、放課後等デイサービスにて児童支援員。

神奈川県綾瀬市、秦野市立小学校の普通学級教諭を15年務める。その際、学級の中に自閉スペクトラム症、場面緘黙症など、さまざまな発達障害の児童がいたことがきっかけで特別支援を要する児童の教育に関心を持ち、その後、特別支援学校教諭の免許を取得し、特別支援学級を25年以上にわたって担当する。

発達障害&グレーゾーンの子どもが「1人でできる子」になる言葉のかけ方・伝え方

発達障害&グレーゾーンの子どもが「1人でできる子」になる言葉のかけ方・伝え方(日本実業出版社)
長年、小学校の特別支援学級で先生として、家庭では発達障害の子どもを育てる母親として、発達障害やグレーゾーンの子どもを支援してきた著者による、効果的な接し方や才能を伸ばすノウハウをわかりやすく解説。子どもたちが笑顔でのびのび成長し、将来の自立にむけて「1人でできる力」をぐんぐん伸ばせる!