発達障害? 人を傷つける「無神経な発言」をやめない子とどう向き合うか
言われたらイヤな気持ちになる言葉の教え方
・相手の気持ちを考えず、すぐに口に出してしまう!
道を歩いているときに、子どもが何の悪気もなく、「あの人、太ってるね」と言ってしまうことがあります。同様に、友だちの描いた絵を見て「変な絵だなぁ」と言ってしまい、相手の子を怒らせたり、あるいは泣かせたりと、トラブルが絶えません。
当の本人は思ったことを素直に口に出しただけなので、どうしてトラブルになったのかがわからず、きょとんとしています。
このように、とくに発達障害の子どもの場合、「言われた相手の気持ちを想像する」ことがなかなかできないので、相手を傷つけてしまったり、怒らせてしまったりすることがしょっちゅうあります。
なぜ、言ってはいけないのか?
発達障害の子どもは、相手の表情を見て、その気持ちを推し量ることは苦手です。そこで、なぜ、その言葉がいけないのか、その理由を伝えることから始めます。
「ねぇ、太っている人がいて、気にしているとするでしょ。それなのに、『太ってる〜』と言われたら、その人はどう思うかな?」と話してみます。「きっと、悲しくなるでしょ。だったら、『太ってる』なんて言葉は言わないほうがいいよね」と伝えてあげることです。
相手がいやがる言葉、よくない言葉を教えていきます。
・言ってはいけない言葉は「見える化」する
①怒った顔をしたり、声を荒げて言うのはNGです。「叱られている!」と思い、言葉が入っていきません。「静かな声で、穏やかに、ゆっくりと!」がコツです。そして相手の目を見て、短い言葉ではっきりと話します。
②文字が読める子どもには、言われてイヤな言葉をいくつか紙に書いて見せます。そして、「自分が言われたらイヤな気持ちになる言葉だな」と気づかせていきます。
(例)太ってる、頭が悪い、ブス、ばか、へた、のろま、足が短い、汚いなど。
③まだ文字の読めない子どもには「絵カード」を見せます!
「言われた子どもは、どんな気持ちになるかな?」と問いかけ、悲しそうな顔の表情の絵カードを見せて「泣いてるよ」と気づかせます。
「絵の中の子ども、泣いてる」と言えたら、「そうだね、よく気づいたね、今度からは言わないようにしようね」と話します。
(例)泣いてる、困ってる、怒ってる、悲しそう……などの絵、写真。
・すぐに謝れるように練習する
相手を傷つけて、怒らせてしまったときは、「ごめんなさい」「もう言わないよ」という言葉がすぐに出るように、親子で練習していきます。
トラブルが発生したときの様子を思い出しながら、自分の言った言葉を振り返ります。
そして、「相手の子どもはどんな表情だったかなぁ?」「そのあと、どうなったかなぁ?」と絵カード(悲しそうな顔など)を見せ、文字で書きながら、思い出していきます。
「その言葉は言わないほうがよかった、悪いことをした」と思い返すことができたら、「相手の子に『ごめんなさい!』と謝ることが大切なんだ」と気づかせていきます。
「泣いちゃったら、なんて謝ればいいかな?」と子どもに聞いて、「ごめんなさい」と言う練習をします。「ごめんなさい」って言えたら、褒めます。
「もし逆に、自分がその立場だったらどう思う?」「その言葉を言われたら、どう感じる?」……と、何度もさまざまな場面を思い出しながら、練習をしていきます。
このような経験や練習を積んでいくうちに、「自分も言われたら、イヤだな」と徐々に相手の立場を理解できるようになり、ほかの人とうまくかかわれるようになっていきます。
発達障害&グレーゾーンの子どもが「1人でできる子」になる言葉のかけ方・伝え方(日本実業出版社)
長年、小学校の特別支援学級で先生として、家庭では発達障害の子どもを育てる母親として、発達障害やグレーゾーンの子どもを支援してきた著者による、効果的な接し方や才能を伸ばすノウハウをわかりやすく解説。子どもたちが笑顔でのびのび成長し、将来の自立にむけて「1人でできる力」をぐんぐん伸ばせる!