子どもの思考力を伸ばす「サクサク、ぺこぺこ、ずきずき」 単なる幼児語ではないオノマトペの効果

オノマトペは大人にとっても重要

――表現力という点で言えば、子どものみならず大人にとってもオノマトペは重要になりそうな気がします。

(齋藤)もちろんそうです。大学の授業で学生たちによく言うのは、正しい敬語やフォーマルな言葉遣いはもちろん大事だけれど、それとともに自分らしい言葉のラインアップを持っておくことも必要だということ。型通りの話し方では、どうしてもその人の人間味が伝わらず、心の底から言っている感じに欠けてしまいます。社会人として悪いわけではないけれど、ちょっと弱いというか惜しいんですね。

それよりも、パーソナリティがグッと前に出るような表現、今の「グッと」もまさにそうですが、オノマトペを活用しながら正直さやライブ感のある表現ができるようになると、評価と信用が得られると思います。

――子どもも大人も、語彙力によって伝える力がつくとともに、内面が成長することにもつながるというのがわかるような気がします。

(齋藤)語彙力が豊富だと、表現力はもちろん、世界の受け止め方も豊かになります。

日本語には、月を表す言葉がとても多いですよね。新月の朔にはじまり、三日月、弓張月、十三夜、満月、十六夜、立待月、居待月、寝待月と、見え方によって日々呼び名が変わります。月を愛でる文化があるからこそ、一つ一つに呼び名を与えて味わってきたのです。

また、太宰治は小説『津軽』の冒頭で、「こな雪 つぶ雪 わた雪 みづ雪 かた雪 ざらめ雪 こほり雪」と記しています。これは雪深い地域ならではの語彙。わたしの生まれ育った静岡ではあまり雪が降らないので、こんなに雪を言い分けることはありません。

多くの言葉を知るということは、豊かな文化を継承することであり、心の豊かさを育むことでもあるのです。

へんし~ん!ことばブック(小学館)
「とろん」と「どろん」、「ふりふり」と「ぷりぷり」、「はらはら」と「ぱらぱら」…点や丸がつくと意味が変わるオノマトペを、かわいくて、くすっと笑えるイラストとともに紹介。”てんてん”おばけが、ねむいときの「とろん」にとりつくとどんな意味になる?「どろん」と消えちゃった! といった具合に、普通音・濁音・半濁音のオノマトペを対にして、1日のストーリーで紹介します。ページをめくる度に、大人がリアクションすると、子どもが喜びます。楽しみながら「伝える力」を養う一冊です。