中学生の息子が「5年間の不登校生活」から抜け出したキッカケ

角舘有理

大学に行くために進学を選んだ

また、3年生になるとやっぱり気になるのは進路です。本人だけでなく、当然親も気になります。私は中学を卒業した後について、息子と話し合いました。

息子は高校には行きたい気持ちはあるものの、5年間も学校に行っていなかったので、急に学校に戻っても毎日通えるのか、また中学校の二の舞になるんじゃないかと不安を持っていました。

それはそうですよね。学校に抱いている根本を解決したわけではないので、同じことを繰り返すのではないかと不安になるのは当然です。

息子ははじめ、高校に行くのは諦めて就職すると言いました。それも一つの選択肢です。しかし、息子は好奇心が強く頑固な人なので、きっとやりたいことしかできないだろうと私は思っていました。

将来、日本で自分のやりたいことをするには、やっぱりまだまだ学歴がついて回るでしょう。学歴も実績もない人間がやりたいことをやろうと思っても、信用がないので誰も相手にはしてくれません。そこで息子にこう説明しました。

「将来やりたいことができたとき、何をやるにしてもやっぱりまだ学歴は必要だよ。やりたいことをするために、もしかしたら大学に入りたくなるかもしれない。そのときは、自分で勉強をして高卒認定を取らなきゃならないよね。独学は結構大変かもしれないから、結局塾とかに通わなきゃならないかもね」

「それに、もし中卒でなにかやるとなると、例えば誰かの弟子になって10年修行するとか、そういう世界になってくるかもね。お母さんが知らないだけで、もしかしたらもっと違う方法もあるのかもしれないけど」

息子は私の話を聞いて頭の中で、今まで避けてきた学校という制度である高校に、3年間通って大学への切符を手にすることと、長い下積み生活をすることを天秤にかけたようです。その結果、「高校を出て大学に進んだほうが、結局は楽だ」ということに気づいたのでした。

息子の結論はこうです。

「自分は人から教わることが嫌いだから、下積み修行なんてとてもできそうにないなあ。それなら少しくらい我慢して、高校っていうシステムを利用して勉強したほうが楽だし近道だね」

そこから、高校受験のための、息子の本気の猛追撃が始まりました。とはいっても、全日制に通うのには不安の残る息子が選んだのは、通信制高校です。学校側で枠があり、出席日数などの条件を満たしていれば推薦してもらえることがわかったので、選考は面接と作文のみでした。

しかし、5年間のブランクがあって学力に自信がなかったため、学校に入ったときに勉強についていけるようにと、自分なりに勉強を始めたのでした。