子どもがお風呂を嫌がる原因は「床」? 発達障害の子の感覚過敏への対処法

熊仁美、竹内弓乃

感覚のお悩み いろんな対処を試みよう!

ここでは、「お風呂の床のひんやり感が嫌で、自分で歩いてくれません」というご相談の事例で、対処や工夫を説明していきましょう。

まず試してみたいのは、「モチベーションを上げる」方法です。「お風呂の床が冷たいからいや」という気持ちを上回るくらい、「お風呂であそびたい!」という動機づけを高める方法です。

お風呂にしかないおもちゃ、お風呂でしかあそべない入浴剤、お風呂でしかできない壁お絵かき……など、「お風呂」の価値をあげてくれるような特別なおもちゃを用意してみるとよいでしょう。意外と、おもちゃに気を取られて、すんなり入れるようになることがあります。

嫌がっている原因が明確であれば、それをとりのぞくひとてまをかける方法もオススメです。

床のひんやり感が嫌な場合の1番手っ取り早い方法は、床を温めてしまうことです。先に大人が入って少し温めてから呼ぶ、事前に2-3分ほどシャワーを流しっぱなしにして床を温めておく、などの方法を試してみるといいでしょう。

ひんやり感を感じさせるのは床の素材の特性も影響しています。床の素材そのものを変えるなど、物理的な環境への工夫もよいでしょう。

ホームセンターには、お風呂用のすのこや水でぬれてもOKな人工芝が売っています。全面でなくてもよいので、お子さんが歩けるよう、一部にそういったものを敷いて、「床のひんやり感」そのものをなくしてしまいましょう。

床そのものの工夫が難しい場合は、お風呂で直接足を床に触れなくてもいいように、お風呂用のサンダルやウォーターシューズなど新たなアイテムを用意するのもよいでしょう。

その際、本当にお風呂専用のものよりは、ある程度履きなれている形のものがよいかもしれません。100円ショップの子ども用のビーチサンダルなどもよいでしょう。

最初、靴を履いて入ることに抵抗があるかもしれませんので、履いて入れたら特別な入浴剤を使える、特別にお風呂でジュースが飲めるなど、練習用のご褒美を用意してもよいと思います。

ひんやり感に慣れるよう、あそび感覚で少しずつステップをアップしていく方法もあります。洗い場に足場だけを用意しておき、お風呂に入る時は床に触れないよう抱っこしてその足場まで連れて行ってあげます。

そして、見たことがないお風呂用のおもちゃや入浴剤など、お子さんが好きなもの、ご褒美になりそうなものをその足場から少し離れた高いところに置いておきます。

もしお子さんが、「あれがほしい」と言ったら、すぐに低いところに移動させ、「はい、自分で取っていいよ」と声をかけます。

自分で足場を降りて取りに行ってくれるかもしれません。または、「じゃあママも届かないから、この足場借りるね」とさりげなくお子さんに降りてもらい、足場にのっておもちゃを取るというアイデアもあります。おもちゃに気を取られていて、案外床で待っていてくれるかもしれません。

または、「いいよー取りにいこう!」と背後からわきの下に手を入れ、自分で取れるように抱き上げてあげるのもよいでしょう。その際、ぴょーんぴょーんとお子さんがジャンプしながら移動するイメージにすると、一瞬床が足に触れる時間をつくることができます。

慣れてきたら、床に触れる回数や時間を少しずつ増やせるかもしれません。いずれのパターンも、最後は楽しいおもちゃがご褒美になるため、自然な流れで取り入れることができます。

もし、少しでも嫌がるそぶりがあったら、何事もなかったかのように、すぐにおもちゃを取ってあげ、気持ちをそらしてあげましょう。