YouTubeばかり見ている…「子どもの困った習慣」が変わる親の声かけ

平熱
2024.02.22 10:28 2023.04.17 11:50

タブレットに熱中する子ども

特別支援教育とは「得意なことを伸ばし、苦手なことを少しでも改善して、生活や学習での困りごとを解決していく」ことを目的とした”全ての人にとって効果的”な教育です。
特別支援学校で教師として働く平熱さんが、「YouTubeばかり見ている」「すぐにお小遣いを使い果たしてしまう」といったお悩みに、特別支援教育をもとにした対処法を語ります

※本稿は平熱著『特別支援教育が教えてくれた 発達が気になる子の育て方』(かんき出版)から一部抜粋・編集したものです。

平熱(特別支援学校教師)
おもに知的障害をもつ子が通う特別支援学校で10年くらい働く現役の先生。小学部、中学部、高等部のすべての学部を担任し、幅広い年齢やニーズの子どもたち、保護者と関わる。「視覚支援」「課題の分解」「スモールステップ」「見えないところを考える」など、発達障害やグレーゾーンの子どもたちだけではなく、全人類に有効な特別支援教育にぞっこん。Twitterアカウント:@365_teacher

暇さえあればYouTubeばかり見ています。

ゲームをする子どもたち

宿題もやらず、本を渡しても読もうとしません。そりゃそうですよね。宿題より読書よりYouTubeを見るほうがたのしいし、楽ちんだし。渡すだけで、やりたくない宿題をやってくれたり、興味のない本を読んでくれたりするほうが驚きです。

わたしたち大人だって、仕事に行かず家事もせず、YouTubeを見続けて暮らしたい。

けれどわたしたちは、仕事をして家事をこなし、やるべきことをやったあとで、YouTubeを見るための時間をつくっているんです。

すなわち、いちばんの問題は「暇さえあればYouTubeを見ている」ことではなく「やるべきことができていない」、また「(本来そうであるべき)優先順位がつけられていない」ことですよね。

だからわたしたちが子どもに対してサポートしていくのは「宿題や読書をする」ことで得られるメリットを理解し、実践できるような環境設定や、折り合いをつけていく手助けです。

笑顔でタブレットをみる親子

今回のお悩みに対してもっとも行われているのは、「宿題(読書)をするとYouTubeが観られる」といった提案でしょう。

子どもと大人、どちらにとってもわかりやすいし、昨日も今日も、全国の家庭で何万人かのお母さん・お父さんたちがカリスマ裁判官のごとく通告しているはずです。

ただ、この環境で口にしがちな言葉かけは 「宿題しないとYouTubeは観られないからね!」なんですね。特別支援教育ではこのような言葉かけは、リボ払いよりおすすめしません。

かけていくのは 「宿題したらYouTubeが観られるよ!」 といった、「見通し」があり(できれば)ポジティブな未来を連想させる言葉かけです。

というのも、「宿題しないとYouTubeは観られないからね!」では「宿題をしなかったらYouTubeが観られないのはわかったけれど、じゃあ、宿題をしたらなにができるのか」は読み取りづらいんです。

「じゃあ結局なにができるの?」に着地しかねません。あと、否定的な言葉が並ぶので、やっぱり心もチクチクします。これらの言葉がけは、やるべきことやメリットを具体的に伝えるほうが、よりパンチ力が増します。

わたしたちだって「仕事をしないと、給料もらえないからね!」より、「1日8時間を週5日、1ヶ月で20日働けば30万円もらえるよ!」と言われるほうが、よっぽどやる気になりませんか?

勉強する子ども

今回は、お悩みに対し、「見通しをもてるポジティブな言葉かけ」でアプローチしましたが、これは「声をかけるだけで子どもがスルスル動く魔法の手立て」じゃありません。動いてもらえないことだって、週に8日はあるでしょう。

「言葉がけ」だけではなく、いろんなアプローチを絡めてみてください。それでもすべてはうまくいきません。どこかでおたがいの折り合いをつけ、落としどころを探ることが大切です。

大人はどうしても、子どもが「自分の思い通りにいかない!」ことに腹を立ててしまいます。

ですが、「自分たちの思うように子どもたちをコントロールすること」だけが正解と思っているわけじゃありませんよね。常に大人の言うことを聞くだけの子どもを育てていきたいわけじゃないはずです。

自分自身で「これをすれば、こんな(たのしい)ことがあるんだ!」を学び、できる限り自分の足で進んでいってほしいじゃないですか。だから「(できるだけ具体的でたのしい)見通し」をもたせる言葉を選んでほしいんです。

こっちが用意した道を進ませるために、子どもの体を強引に反転させるんじゃなく、子どもが自然と進みたくなる道すじを用意してあげられたらいいですよね。いつか、子どもが「自分で」その道すじを見つけてくれるまで。