娘が思春期を迎えたら…産婦人科医に聞く「生理について知っておくべきこと」
特に女の子は、「女の子のはこうあるべき」といった世間の言葉にふりまわされることなく、自分の人生を主体的に生きてほしいと宋先生はいいます。
では、子どもにどんな風に教えたらよいのか、生理との付き合い方、卵子老化は本当か、女性ならではの病気などについて、宋先生ならこんな風に伝える、というものを教えてもらいました。
※本稿は、宋美玄・監修 のはらあこ・漫画『女の子の体 一生ブック』(小学館)から一部抜粋・編集したものです。
生理がつらい人にはピルという選択肢がある
女性の心身は、毎月、女性ホルモンの影響を受けて生理があるため、1か月のうち4分の3が不調だともいわれています。
大人になると、勉強や仕事、結婚、出産など、人によってそれぞれやりたいことが出てきます。「全力で仕事に打ち込みたい」と思っていても、体と心の不調にふりまわされて思うようにできない…という人もいます。
そんな人には、ピルなどのホルモン療法をおすすめします。ピルには女性ホルモンがふくまれていて、排卵をおさえます。婦人科で処方してもらえます。毎日1粒を飲み続けると、生理が軽くなり、生理にまつわる症状もよくなることが期待できます。
また好きなタイミングに生理をずらすこともできます。個人差がありますが、健康な人なら、こわい副作用はきわめて少ないです。
WHO(世界保健機関)では、ピルは初潮がきたら服用できるとしています。
出産と年齢の関係 卵子の老化は本当です
また、妊娠は、パートナーがいればいつでもできるわけではありません。
妊娠する確率は、35歳ごろから、少しずつ下がってきます。40歳以上になると、治療をしても妊娠しないことが多くなり、妊娠しても流産する確率が上がります。40歳以上の妊娠で約50%が流産するともいわれます。
もちろん、40歳を過ぎて出産した人もたくさんいます。しかし、これには個人差があるので、だれもが同じになるとは限りません。
生まれながらにもっている卵子の数には限りがあり、時間とともにへっていきます。しかも卵子は年をとっていきます。卵子の老化で妊娠しにくくなるというのは事実です。女性が妊娠できる期間は限られているのです。
妊娠・出産・子育てにはたくさんの時間とパワーが必要です。仕事をしている人ならきちんとお休みがとれるのか、産後、仕事にどのように復帰できるのかなど、考えてしまいますね。
妊娠・出産にベストなタイミングを考えるのは、なかなかむずかしいかもしれません。自分の年齢と、仕事ややりたいことのバランスの折り合いを見極めていくことが必要です。
生理の回数が増えた現代、女性特有の病気が増えています
今を生きる私たちは、一生のうちに約450回も生理を経験するといわれています。1回の生理を5日間として計算すると、生理期間はトータルで約6年間にもなります。
一方、100年ほど前の女性が一生で経験していた生理は、平均するとわずか50~100回ほど。なぜこれほど少ないのかというと、初潮(はじめての生理)がおそく、出産回数が6回程度と多かったから。
出産の前後1~2年は生理が止まるため、出産回数が多いほど生理は少なくなります。いまは、出産回数が0~2回がほとんどなので、生理の回数がものすごく増えています。
生理の回数が増えると子宮や卵巣などに負担がかかるため、100年前と比べると、現代は女性特有の病気にかかる人が増えています。
具体的には次のような病気があげられます。
まず、「子宮内膜症」。生理とは、赤ちゃんのためにふかふかベッドになった子宮内膜がはがれ落ちて出血(経血)として出てくることです。
このはがれ落ちた子宮内膜の一部は、実は卵巣に向かって逆流しています。生理のある女性の9割が逆流しているといわれます。逆流した子宮内膜が卵巣のまわりに「ひっこし」して、生理の度にそこから出血するようになることがあります。これが子宮内膜症です。
子宮内膜症の30~50%が不妊症(妊娠しにくい状態)だといわれます。また、卵巣に経血がたまって茶色いチョコレート色になったものは「卵巣チョコレート嚢胞」といわれて、これはわずかではありますが、がん化のリスクがあります。
治療法は、薬(主にピル)や、手術などです。早いうちにピルを飲むと、子宮内膜症を予防できるという報告もあります。
「子宮筋腫」」はめずらしくない病気です。30歳以上の女性の2~3割がなるといわれます。子宮の中にこぶ(良性腫瘍)ができた状態で、症状がなければ気にしなくて大丈夫です。
出血量が多い、生理痛がひどいなどの症状があれば、婦人科を受診してください。子宮筋腫がある場合は、大きくなっていないか、年に一度は婦人科で診てもらいましょう
乳がんは胸にできるがんで、女性の13人に1人がかかるといわれ、男性もかかることがあります。40歳以上で2年に1回の検診が推奨されています。
子宮けいがんは、子宮の入り口「子宮けい」にできるがん。20歳以上で2年に1回の検診が推奨されています。
子宮体がんは子宮内膜にできるがんで、50歳以上の閉経後で不正出血がある人が検査対象となります。
卵巣がんは、早期発見がむずかしく、有効な検診が確立されていません。子宮けいがん検診のときに、超音波で卵巣の大きさを確認することで早期発見につながることもあります。
宋美玄・監修(産婦人科医) のはらあこ・まんが生理、思春期、妊娠・出産、更年期…女性の体で何が起きているのかを、日本でもっとも有名な産婦人科医・宋美玄先生が科学の視点で、子どもに寄り添いながら解説します。
マンガとともに構成されていて、おもしろく、わかりやすくなっています。
また、「ナプキンの持ち運び方法」「生理痛がつらい」など人生のステージごとでの悩みやトラブルの解決法を紹介。
プライベートゾーン、体の自己決定権、LGBTQ+など、大人が女の子に伝えるべきすべてを凝縮した唯一無二の本です。これ一冊で、一生の見通しがたち、人生を主体的に生きる手助けになります。大人の学び直しにもなります。