罰を与えると逆効果…「イタズラをする子ども」に親がとるべき態度

イザベル・フィリオザ[著],土居佳代子[訳]
2023.06.07 16:30 2023.07.04 11:50

子どもの気持ちがわかる本 子どももママもハッピーになる子育て<『子どもの気持ちがわかる本』P.150より>

小さな子どもが、失敗したり、やってはいけないことをしてしまうことは多々あります。そんなとき、大人が怒ったり、罰を与えたりするのは正しい行動ではありません。

心理療法士のイザベル・フィリオザさんは、「子どもの失敗は、むしろ問題を解決する力を養うためのチャンスだ」と言います。そこで今回は、子どもが失敗やいたずらをした際の親の最適な行動についてお伝えします。

※本稿は『子どもの気持ちがわかる本』(イザベル・フィリオザ[著]、アヌーク・デュボワ[イラスト]、土居佳代子[訳]/かんき出版刊)から、一部抜粋・編集したものです

イザベル・フィリオザ (心理療法士)
1957年パリ生まれ、心理療法士。父は心理学者、母は心理療法士で病気を体・心・感情を含めて全体的に見るというホリスティック医療の先駆者。パリ第5大学で、臨床心理学の修士号を取得したあと、フランス、アメリカ、ベルギー、イギリスなどで、交流分析、新ライヒ派のセラピー、神経言語プログラミングなどを学ぶ。それ以後、独自のセラピーを開発し、感情を専門とするセラピストとして、多くの大人や子どもの治療に当たる。

著書に『心のインテリジェンス』『未来をひらく愛の子育て』(いずれもPHP研究所)や、中でも本書シリーズ『子どもの気持ちがわかる本』(かんき出版)は、世界的な大ベストセラーとなり、16カ国で翻訳されている。 

子どもは何が起こったか理解できていない

【子どもの声】
ぼくはコップを持っていたんだ。そしたらガチャンって音がした。床にガラスが飛び散ってるのが見えるけど、ぼくのコップはどこへ行っちゃったんだろう?

幼い子どもには、因果関係、つまり自分のしたことと起こったこととの関係がそれほどはっきりしていないので、目の前にある壊れたコップのかけらと、さっきまで自分が手に持っていたコップのつながりもよくわかりません。ですから、失敗を指摘してことを荒立ててもあまり意味がありません。

子どもの失敗やいたずらに対して、私たち親は時々おかしな態度をとってしまいます。

たとえば、「いやになるわ、ほかにもいっぱいすることがあるのに……」などとブツブツ文句を言いながらその後片づけをするようなことがありますが、これでは、子どもが自分のしたことの結果と向き合うことができません。

さっさと片づけておいて叱るより、何が起こったのか、どうすればいいのかを一緒に考えさせるようにしましょう。

NG行動「罰を与える」

失敗やいたずらをした子どもに罰を与えることは、効果的ではありません。もし罰を与えることで人間が良くなるなら、もうとっくの昔に犯罪者などいなくなっているはずです。

それなのに、どうして相変わらずそんな幻想を抱くのでしょう。確かにしばらくの間は、一定の効果が見られます。

けれど、子どものためになるわけではなく、罰した人のほうが、そうやってとりあえずその場をおさめたと感じて”ホッ”とできるという効果があるだけ。それを除けば、罰がこれほど用いられる理由がわかりません。罰を与えることには悪い点がたくさんあります。

罰は対症療法であって、問題の原因には向かい合っていません。問題は解決されないので、ほかのとっぴな行動となって現れたり、エスカレートしたりする危険があります。

罰を与えられることで、子どもは自分の行為の当然の結果に向き合わずに済ませてしまうことになります。したことと罰との間に関連性がない時、子どもはその行為が不適切である理由について、何も学びません。

子どもは、悪いことをしてしまったな、と思う健全な気持ちを持つ代わりに、罰した親に対する、不満、怒り、恐怖といったネガティブな感情を持ってしまいます。

子どもは恥ずかしい思いもするので、自分は悪い人間なのだと感じてしまいます。そのため、してしまったことを意識できるような、健全な罪悪感を持つことができなくなってしまいます。

罰を与えることによって起こる感情が、ストレスの回路を刺激するため、子どもは自分のしたことをよく考えてみることなどはしません。

記憶は働きますが、思い出すのはストレスと親に対する恐怖で、どうしてそんな罰を受けることになったのかについてではありません。罰することは悪いことをすると警察官などに捕まるということはわかりますが、責任と自制については何も教えてくれないのです。

罰によって生まれた恐怖と恥の思いせいで、より高度な脳の機能が妨げられ、ひいては知的活動、情緒や社会集団へ適合する能力などにも影響を及ぼすことになります。

一方で子どもが「どうだっていいや」と、不快な感情から身を守るようになること、また一時的な効果しかないことから、罰は徐々に厳しいものになっていくでしょう。

罰することで権威を示しているのではなく、権威がないから罰するのです。本来なら、ママやパパには、子どもに信頼される自然の威厳があります。これさえ認められていれば、権威を振りかざす必要などまったくありません。

親が子どもを罰するのは、力が足りなくて、どうすればいいのかわからないから。子どもはそれを感じ取って、親への信頼を失いますが、そのことで子どもは不安になり、この不安感によって、もっととっぴな行動をとることになります。