子どもの脳の組織に影響も…「11歳までの子を罰しても無意味」な理由
幼児と思春期の間の6歳から11歳くらいの子どもは、とてもデリケートな時期。思春期の入り口に差し掛かり、問題行動が増えてくることもあります。また、ずいぶんと大きくなったと思ったのに、何度注意しても同じ失敗を繰り返す子どもに親がイライラしてしまうこともあるかもしれません。
心理療法士のイザベル・フィリオザさんが、そんなデリケートな時期の子どもへの親のかかわり方のヒントを伝えてくれます。
※本稿は『6~11歳 子どもの気持ちがわかる本』(イザベル・フィリオザ[著]、アヌーク・デュボワ[イラスト]、土居佳代子[訳]/かんき出版刊)から、一部抜粋・編集したものです
イザベル・フィリオザ (心理療法士)
1957年パリ生まれ、心理療法士。父は心理学者、母は心理療法士で病気を体・心・感情を含めて全体的に見るというホリスティック医療の先駆者。パリ第5大学で、臨床心理学の修士号を取得したあと、フランス、アメリカ、ベルギー、イギリスなどで、交流分析、新ライヒ派のセラピー、神経言語プログラミングなどを学ぶ。それ以後、独自のセラピーを開発し、感情を専門とするセラピストとして、多くの大人や子どもの治療に当たる。
著書に『心のインテリジェンス』『未来をひらく愛の子育て』(いずれもPHP研究所)や、中でも本書シリーズ『子どもの気持ちがわかる本』(かんき出版)は、世界的な大ベストセラーとなり、16カ国で翻訳されている。
子どもの愛情のタンクを満たしてあげる
生まれた時からずっと安全で安心できる愛着を受け取っている子どもたちには、ストレスをうまく管理できる能力があることが、研究によって確認されています。
けれどあまりエンジンをふかしすぎると、車のガソリンタンクがすぐに空になってしまうのと同じように、子どもの愛情のタンクも一度満たせばいいというわけではありません。
友達との口論、からかわれたこと、テストの点が悪かったこと、叱られたこと、別れ、失敗などは、折り合いをつけるための大量のエネルギーをタンクから引き出します。
家庭内にいざこざがあったり、下の子が生まれたりすれば、もっとエネルギーが必要です。
ただ子どもを愛するだけでは十分ではありません。常に互いに働きかけること、子どもの要求に応えることが大切です。もうじき中学に入る歳になっても、いいえ、入学してからも、愛情と接触を絶えず供給する必要があります──特に子どもが大変な目にあっている時は。
日常的に、十分な愛着を受け取っている時、子どもは安全な場所にいると感じ、協力的になり、落ち着いて遊んだり、人の話を聞いたり学んだりすることができます。
反対に、ママのほうがストレスを感じていたり、怒っていたり、近寄りがたい雰囲気だったり、パパも子どものために時間を作れなかったりすると、子どもの愛情のタンクは空になってストレスを引き起こします。
その結果、攻撃的になったり、自分の殻に閉じこもってしまったりするのです。
子どもが安定した内面の基盤を持つために
多くの場合、ママが愛着の主要な対象ですが、パパも同じくらい大事な愛着の対象です。
愛着とは、赤ちゃんが世話をしてくれる人との間に作る関係のこと。愛着の対象が、世話をしてくれる、コミュニケーションを取ろうとする試みに注意を向けてくれるというように、子どもの要求に応えてくれる時、子どもは安全で安心できる愛着、言い換えれば安定した内面の基盤を持つことになります。
親が子どもの要求に応えないで、世話をせず、子どもの感情に注意を向けず、罰したり殴ったりすれば、脳の組織に影響を与え、将来のストレスに対する抵抗力やDNAまで損ねることになります。
おじいさんやおばあさん、おじさん、おばさん、友だちのパパやママ、先生、近くのお店の人、お医者さんや看護師さんなども、子どもに愛着を供給してくれます。
親に限らず誰でも愛着の対象となり得るので、時には、誰かの愛情のこもった眼差しやちょっとした言葉だけで、子どもは立ち直ることができるのです。
緊張した、信頼感のない雰囲気の中では何も変わらないし、事態を解きほぐして検討することも、理解することもできません。最初のステップは、大人も子どももそれぞれが一緒に変化の当事者になるようにすることです。