小学1・2年生の「算数の力」を伸ばすために、親に知ってほしいこと
子どもに教えるのが最も難しいのは、社会には「答えはひとつではない」「答えがない」ことがたくさんあること。そこで答えを導くには「自分のあたまで考える力」が必要なのは多くの親御さんは経験から理解できると思いますが、子どもに理解してもらうのは簡単でありません。
昨今の中学、高校、大学受験ではこの力、「思考力」を問うものが急増しています。本記事では『自分のあたまで考えるドリル』(TAC出版)の監修を担うiML国際算数・数学能力検定協会の藤原辰也氏に、思考力の培い方について話を聞きました。
社会で求められる思考力とはどんな力か?
――そもそも思考力とはどのような力なのでしょうか。
思考力にはいろいろな意味がありますが、「初めて直面した何か新しいモノやコトに対して、自分の頭で考えて対処できる力」も思考力です。
今の社会では、教わったことをこなすだけではなく、新しいものを発見したり生み出したりする力が求められます。こうした思考力の育成には、教科の中で算数・数学が最も適していると考えています。私たちiML国際算数・数学能力検定協会が「算数・数学 思考力検定」を実施するのはそれが理由です。
――算数・数学でどのように思考力を育んでいくのか教えてください。
思考力検定では、「数と量」「空間と形」「変化と関係」「データと不確実性」「論理」と5つの分野を設けています。
例えば、「数と量」や「変化と関係」、「データと不確実性」では、数値の動きからその先に何が起こる可能性がより高いのかを予測し、最もふさわしい選択肢を選ぶ問題などを出題しています。
社会では、多様な要件を組み合わせて、より可能性の高いものを選択していくことの連続です。
例えば、企業であるプロジェクトを実施するとします。どんな人を集めて、どんな道筋で、どれくらいお金を使って…というような、いくつもの選択肢を組み合わせながら最適を考えていきますよね。算数はこういった思考力を鍛える教科だといえると思います。
解き方を教わっていない状態で考えることを楽しむ
――過去の詰め込み型の算数・数学と、思考力を育てるための算数・数学はどのあたりが大きく異なるのでしょうか。
これまで親御さんが受けてきた算数の授業は、解き方のレクチャーが中心だったのではないでしょうか。一方、現在の学習指導要領では「思考力・判断力・表現力」を1つの柱に据えられています。
大人になると、「解き方を教わっていない問題が解けるの?」と思いがちです。しかし、本来は「どうやって解こうかな」と考える時間こそ、力を養う大切な時間なのです。
弊社が発行する問題集『算数ラボ』や『自分のあたまで考えるドリル』を使っている子の話を聞くと、小さい子であればあるほど、知らない問題に対して楽しんで挑戦しています。
小さい子は、迷路や間違い探し、塗り絵などを喜んでしていますよね。また、忘れた頃にもう1回解いてみると新たな楽しさにも気づけます。
勉強は苦行ではなく、本来は楽しいものなのだという「学びの喜び」を味わってもらうことを私たちは目指しています。
思考力を伸ばすポイントは、解き方を覚える前に、考える楽しさを感じられる問題に取り組んでもらうことではないでしょうか。
▼情報・条件を使いこなす力:1・2年用 「トランプをひいて」
▼筋道を立てて考える力:1・2年用「すきなどうぶつ」
▼物の形を認識・想像する力:1・2年用P.34「形をくみあわせて」
――思考力はすべての子どもが持っているものなのでしょうか。
誰しもが持っていると思います。例えば、公園に行くと「何をしようかな?」と周りを見渡して遊びはじめますよね。その時点で子どもは頭を使っている。「うちの子、何も考えていないのでは……」と心配になることもあるかもしれませんが、自分のやりたいことであれば絶対に考えますし、自分がやりたくないことだったら考えない。ただそれだけの違いなのではないでしょうか。