小学1・2年生の「算数の力」を伸ばすために、親に知ってほしいこと

藤原辰也・佐藤智(文)
2023.08.21 15:17 2023.07.18 06:00

家庭で思考力を育む接し方とは?

笑顔でタブレットをみる親子

―子どもの思考力を失わせないために、保護者にはどのようなアプローチが求められるでしょうか。

楽しんでいることをとめてほしくないと思います。また、考えて迷っていることを叱らないでほしいとも思っています。何も考えていないように見えても、その子は考えているかもしれません。

大切なのは、保護者の子どもへの寄り添い方ではないでしょうか。子どもの手が止まっていたら、「一緒に考えようか?」「どこまでできた? お父さんにも教えて」という投げかけをしてみます。実際のところ、私も子どもの様子を見て、ヤキモキしてしまうことがあります。

しかし、「早くやりなさい」「こうやりなさい」といいたいのをグッとこらえて、子どもが自分なりの考え方で導き出せることを待つように頑張っています。もちろん、100%できているわけではないのですが……。

―「子どもに勉強を教えてあげる必要があるのか悩む」という声もよく耳にします。

子どもが問題の意味をわかっていないと思ったら、一緒に考えてあげます。具体的にいうと、サイコロの問題だったとしても、サイコロ自体をイメージできない子もいます。大人は2次元の図から3次元の図をイメージできる人が多いですが、それができる子どもは決して多くはありません。
問題の意味が理解できたら、そこから先は子どもの出番です。保護者が入り込んでいかないことです。親が一緒に考えてしまうと、その時点で子どもは考えることを放棄してしまう可能性がありますし、わかった気にもなりやすいからです。

子どもたちがどう解いていこうとも、それは自由です。例えば、7+4を解く際には、7つ丸を書いて、続いて4つの丸を書いて、数えてもいいんです。そこで、「こうやったらいいんだよ」と教えるのではなく、「おお! よくできたね」と褒めると子どもはとても喜びます。

子どもに考えることが身についていけば、どこかで「こんなやり方もあるな」と気づくタイミングがあります。小1のときに足し算や引き算が苦手でなかなか10の塊がわからなかった我が子も、小2になり、知らないうちにできるようになっていました。成長のスピードは人それぞれです。理解できるまでじっくりつき合うのが大事です。

勉強をする子ども

―家庭で思考力を育むためにできることとはどういったことでしょうか。

うちの子どもは紙飛行機が好きなんです。実際に紙飛行機を飛ばして、「上に上がっちゃったね」「右に曲がっていったね」と観察し、どうしたら真っ直ぐ長く飛んでいられるかを試行錯誤していきます。このときに大人が答えを示すのではなく、子どもに考える時間を設けることが大切です。「軽いから上に行ってしまうのかな」ということに気づければ、クリップなどをつけて、再度試してみるという発想にたどり着きます。

つまり、肩肘はって学びの場を作ろうとせず、遊びの中で楽しんで試行錯誤することができればいいと思うのです。ちなみに、我が家の場合は紙飛行機でしたが、野球に夢中になる子は野球で、ダンスに夢中になる子はダンスでと、それぞれ好きなことに対して試行錯誤すればいいと思います。 それが、保護者が好きなことであれば一緒に続けやすいですよね。たとえ数字に苦手意識を持っている保護者の方でも、野球好きならば、野球のデータを取って示してあげることはできるのではないでしょうか。その時も、「こうしたらもっと上手くなるよ」と答えを示すのではなく、データの数値をもとに子どもと一緒に考えていくという姿勢が重要です。

―子どもが考え続けて試行錯誤する姿勢を持ったまま大人になっていくには、どういった接し方が必要でしょうか。

好奇心を持って活動している大人が身近にいると、刺激を受けて、自分の好奇心を封じ込めずに成長していけるのではないでしょうか。だから、保護者の方にも自分の「好き」を大事にしてほしいです。

子どもによっては、発達段階に応じて、好奇心が表に出にくい時期もあると思います。「うちの子は何にも興味なさそうだな……」と感じることがあったとしても、子どもは内心では夢中になることを持っていたりするものです。外側から決めつけないことも大切なのではないでしょうか。

私たちは考えることを楽しめる子どもたちが、1人でも増えてほしいと願っています。『自分のあたまで考えるドリル』の出版後の反響を見ると、考えることを楽しむ子どもがじわじわと増えていると実感しています。

保護者の方には、「考えることにワクワクする」「自分で探究することが楽しい」という子どもたちをどうか見守ってほしいと思っています。そして、大人のひとりとして、そうした子どもたちの好奇心を認めて、生かせるような社会にしていきたいと考えています。

関連書籍

『自分のあたまで考えるドリル』の画像1
『自分のあたまで考えるドリル』(TAC出版)
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対象学年は、小学1・2年生ですが、就学前のお子様のトレーニングにもぴったりです。