中学受験の暗記を制すには…「SAPIXのカリキュラム」に学ぶ勉強法
子どもがなかなか勉強にやる気を出せないのは、本当に子どもだけに理由があるのでしょうか? 今回は自主的に勉強できる子どもを育てるための「親の働きかけ」について解説します。
※本稿は、佐藤智著『10万人以上を指導した 中学受験塾 SAPIXだから知っている 頭のいい子が家でやっていること』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
佐藤智(教育ライター)
両親ともに教員という家庭に育ち、教育の道を志す。横浜国立大学大学院教育学研究科修了。中学校・高校の教員免許を取得。出版社勤務を経て、ベネッセコーポレーション教育研究開発センターにて、学校情報を収集しながら教育情報誌の制作を行う。その後、独立し、ライティングや編集業務を担う株式会社レゾンクリエイト(http://raisoncreate.co.jp)を設立。全国約1000人の教員へのヒアリング経験をもとに、現在は教育現場の情報をわかりやすく伝える教育ライターとして活動中。
SAPIX小学部
1989年の創立以来、論理的な思考力と表現力、知識にとらわれない豊かな感性、そして主体的に学ぶ姿勢の育成を教育理念として掲げ、受験指導に携わってきた。難関中学校への高い合格実績で知られている。小学部は東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県に49校舎。中学受験指導した小学生は10万人を超える。
子どもの記憶力に期待しすぎていませんか?
子どもは忘れる生き物です。びっくりするくらい忘れます。そして大人になると、こんなにも子どもの頃に忘れていたこと自体を忘れてしまうんですよね。だから、親としては「昨日言ったばかりでしょう!」「もう何回も言っているじゃないの!」とイライラしてしまいます。
でも、「子どもは忘れる生き物なのだ」と思っていれば、少しだけ気持ちがラクになりませんか?
どんどん忘れていくことを念頭に置いて、根気よく、繰り返し学んでいくことが大切です。SAPIXのカリキュラムも子どもが忘れることを前提としてつくられています。だから、何回も何回も何回も同じ内容がでてきます。
覚えておいてほしい漢字や知識について、「絶対に忘れないようにね」と子どもに念押ししてもあまり意味がないでしょう。それよりも、忘れていたら「また覚えよう」と前向きな声をかけていきましょう。忘れたことに一喜一憂するよりも、次は覚えていられるように、もう1回丁寧に繰り返していく。これが大事なポイントです。
イライラしないもう一つの方法として、お父さんお母さんが何かまったく新しい学びをスタートしてみるのもいいかもしれません。
案外、1週間前に習ったことも覚えていないものです。リアルタイムに自分が忘れてしまうような体験をしていれば、「なかなか覚えていられないものだよね」とおおらかな気持ちになれるかもしれません。
Check!
・子どもは忘れる生き物。「また覚えよう」と前向きな声をかけて根気よく繰り返す
子どもの自信を伸ばすきっかけは「得意」なことにある
子どもが得意だと思っている教科は、絶対に認めてあげましょう。ときには、「子どもは得意だって言うけれど、別に成績がいいわけではないんだよね」と親としては褒めにくいこともあるでしょう。
たとえば4教科の平均偏差値が40弱で、ある教科だけ偏差値45だったときに「これで得意と言っていいのだろうか?」と思うかもしれませんよね。
でも、子ども自身が「得意だ」と思っていたら、決して否定してはいけません。これは教科の学びだけの話ではありません。子どもは一つでも得意だと思っているものがあると救われます。その得意なことをしているときに、ホッとできたり自信をもてたりするからです。
勉強が苦手でも、サッカーが得意だったり、リコーダーを吹かせたら一番うまかったり。鬼ごっこで絶対に捕まらないという特技でもいいでしょう。「これならばできるぞ」と思うものが一つでもあれば、それが子どものよりどころになります。
ご家庭では子どもの「得意」を否定せず、一緒に見つけて、褒めてあげられるといいでしょう。得意なことに没頭できる時間を十分に設けてあげることは、子どもが安心する大事なポイントなのです。
一方で、「あなたは勉強が苦手だからね」「算数は本当にできないね」と伝えてしまうと、子どもはその言葉を鵜呑みにして、苦手意識をもってしまう可能性が高まります。また、苦手教科の勉強ばかりに注力すると、その教科が嫌いになってしまう危険性もあります。
Check!
・得意なことを褒めて子どもの支えにする
・得意なことに没頭する時間をつくる
・苦手克服に注力しすぎない