「集中力がない、すぐに叩く」5歳の子が心配…小学生になるまでにやっておくといいこと

齋藤孝

「友だちをたたいてしまう」「集中力がない」…いい子なのにどうして…と、親の悩みはつきないもの。保育園・幼稚園から小学校に上がるタイミングは、子どもの成長にとって大きな節目といえます。比較的自由にあそべた環境から席に座って先生の話を聞き、勉強をする小学校がストレスに感じる子どもも少なくありません。人間関係もだんだん複雑になってきます。

どうしたらスムーズに小学校に移行できるのか。『へんし~ん! ことばブック』を上梓し、「幼児教育と小学校教育の架け橋委員会」の委員を務める齋藤孝先生に聞きました。

集中力のない子どもが心配

Q.子どもが来年から小学生になるのですが、学校の勉強についていけるかが心配です。勉強以前に、集中力がないので、そもそも席に座っていられるのかという不安もあります。入学前に、何かできることはないでしょうか?

A.親は子どもの「相方」となって、協力して絵本を読んでみよう!

「今できることとしては、家庭でじっと座って集中する練習をするといいでしょう。おすすめしたいのは、親子で絵本を読むこと。文字を読む習慣をつけておくと、小学校に入ってからの勉強にも役立ちます。

気をつけたいのは、親が先生のような立場にならないこと。『はい、ここからここまで読んで』と指導してしまうと、子どもは楽しくありません。楽しむのが主眼ですので、親は子どもの『相方』のようなイメージで、協力しあうという姿勢が大切です。

そのためには、ゲーム感覚で絵本を読むこと。一文ずつ交代で、演技をしながら感情を込めて臨場感たっぷりに読みます。二人で物語世界の中に没入していくことで、気持ちを共有できますし、連帯感も生まれます。あるいは、『もし○○ちゃんがここにいたら、どうするかな?』と質問してみます。すると、集中力が身につくだけでなく、想像力や考える力も育まれます。子どもがうまく回答できなかったら、『お母さん(お父さん)だったら、こうするな』とリードします。

読み終わったら、『一冊ぜんぶ読んだね!』とハイタッチをして、達成を喜び合います。その喜びが、集中力の“種”になるはずです。」

5歳の子がすぐに友だちと喧嘩する

Q.5歳児なのですが、友だちに対して手を出したりケンカをしたりするのが悩みです。小学校に上がったら、トラブルを起こしてしまうのではないかと心配です。親にできることは何でしょうか?

A.「オノマトペ」で感情を言葉にする力を育みましょう!

「子どもが友だちに手を出してしまうのは、乱暴な性格だからなのではなく、往々にして相手の言い分に反論したり自分の気持ちを的確に伝えたりする言葉を持っていないからです。
家族など限定されたコミュニティの中では言葉にしなくても伝わったことが、小学校に上がって人間関係が広がると、伝わらなくなるケースが出てきます。その時に必要なのが、言葉の力。自分の思いを言葉にできると、トラブルは減ってきます。

未就学児に言葉の力をつけるのにおすすめなのが『オノマトペ』。オノマトペはものの状態や音を表す言葉であり“感じる言葉”でもあるので、言葉の持つ感覚を人と共有することができます。

『へんし~ん! ことばブック』でも紹介していますが、たとえば痛い時。『ずきずき』なのか『ちくり』なのか『がんがん』なのかで、痛みの質は違います。オノマトペだと痛みの質を共有して理解してあげることができるので、子どもも安心します。

もちろん、人間関係におけるある程度の摩擦は必要です。言葉の力があれば、その摩擦が大きなトラブルに発展する前に、コミュニケーションで解消していくことができるのです。言葉を豊かにすると感情が豊かになり、感情が豊かになれば人間関係もうまくいきます。」