発達障害の子の入園を拒否された…許される? 知っておきたい「子育てと法律」

高橋麻理

公園、幼稚園、保育園、お友達のお家など、交友関係と活動範囲がぐんと広がり、子どもの成長を感じる時期。お友達との遊びや、親以外の大人との関わりを通して学ぶことがたくさんあるでしょう。

同時に、親の目が届かなくなってしまう場面や、ヒヤリとするシーンに出くわすことなど、トラブルも増えてきます。想定外の事態が起きてしまったり、親の手に負えない状況になってしまったり、思わず感情的な対立になってしまったりしたとき、法や、国が公表しているガイドラインなどを知っておくと、冷静に対処できるかもしれません。

※本稿は、高橋麻理著『子育て六法』(日東書院本社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

高橋麻理(弁護士)
第二東京弁護士会所属。弁護士法人Authense法律事務所。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。2002年検察官任官。東京地検、大阪地検などで勤務後、2011年弁護士登録。

Q. 発達障害を理由に入園を断られた。障害がある子どもは保育を受けられないの?

A. 障害を理由とした差別や不当な扱いは禁止されています。

参考となる法令など:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針

「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(いわゆる障害者差別解消法)は発達障害も対象です。

この法律では、行政機関と事業者に対し「障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない」と定められています。保育施設においても、公立かそれ以外かにかかわらず、障害を理由として不当な差別的取扱いをしてはいけません。

また、内閣府が公表している「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」では、障害を理由に異なる取扱いをする場合は、「正当な理由」があるかどうかを個別事情に基づき判断した上で、その理由を説明し、理解を得るよう努めることが求められています。

ですから、ただ発達障害を理由に入園を拒否するのは、不当な差別に該当する可能性があります。仮に入園できても、その後、子どもの特性に応じた対応がなされるかという点も気になるところだと思います。

法律では事業者や行政機関等に対し、障害のある人からバリアを取り除くための対応を求められたときは、負担が重すぎない範囲で対応する合理的配慮の提供をしなければならないと定めています。

ですから、子どもが保育施設での生活に困りごとを抱え、それを訴えているのに放置するのは、合理的配慮の不提供として差別にあたる場合があります。

保育施設に対しては、発達障害を理由として入園を拒否するのは不当な差別的取扱いにあたると伝え、入園受け入れを求めるとともに、入園後に必要な合理的配慮について具体的に要望を伝えてみてください。

もっとも、保護者としては、入園を拒否してきた保育施設と対話を重ねること自体がしんどく感じられるかもしれません。そんなときは、弁護士に依頼して話し合いをするとか、場合によっては、他の保育施設への入園を検討するのも選択肢になるかもしれません。