ニキビケアには固形石鹸が良い? 皮膚科医が教える「正しい洗顔」

吉澤恵理、花房崇明
2023.09.14 12:14 2023.08.28 06:00

ニキビケアには固形石鹸が良い? 皮膚科医が教える「正しい洗顔」の画像1

多くの子供を悩ませる「ニキビ」。男女ともに、早くて10歳頃から肌のトラブルを抱えるようになると言います。痛くないからといって放置しておくと、肌にクレーターとして一生残ってしまう可能性も。肌にコンプレックスを持たないためにも、正しいスキンケアの方法を知っておくことは重要です。そこで、大阪府豊中市の千里中央花ふさ皮ふ科院長・花房崇明医師に、「ニキビの正しい治療方法」についてお話を伺いました。

ニキビ治療の基本

花房崇明(はなふさ・たかあき)
医師の花房崇明(はなふさ・たかあき)さん

【吉澤】私が学生の頃は「ニキビは青春のシンボル」と言われ、当時は市販のニキビ治療薬でさえ一般的ではありませんでした。しかし、前回のインタビューでも『ニキビは皮膚科を受診することをお勧めします』と花房先生がおっしゃていたように、最近のニキビ治療の基本は大きく変わっているようですね。

【花房】はい、正直なところ、海外に比べ、日本のニキビ治療は20年以上遅れをとっていました。しかし、この10年ほどで日本のニキビ治療は急速に進化し、海外の治療に追いついてきたといえると思います。

その昔は、一般的にニキビは病気とは認識されていなかったと思いますが、実はニキビは、「尋常性ざ瘡」という正式な病名があります。ニキビを放置したり、誤ったセルフケアで症状を悪化させてしまうと、さらに広範囲にニキビが広がってしまったり、「ニキビ跡」が一生残ってしまうケースもあります。

また、思春期の場合、大人が思っている以上に大きな悩みとなっていることも少なくありませんので、親御さんにもニキビの対処法について正しく理解してほしいですね。

【吉澤】確かに私の息子たちもそれぞれにニキビがひどく悩んだ時期がありました。ニキビが赤く、頬や額に広範囲に広がった時は、『出掛けたくない』というほどの時もありました。当時を振り返っても正しいニキビ治療は大切だなぁと思います。では、現在のニキビ治療の基本について教えてください。

【花房】はい。では、先ずスキンケアについてお話します。ニキビができる大きな原因は、過剰に分泌された皮脂が毛穴に詰まり、ニキビの原因菌であるアクネ菌が増え、炎症が起ることにあります。

ニキビ治療を行っても間違ったスキンケアで思うように治療効果が出ない場合や、治療しているのに悪化してしまうこともありますので、正しいスキンケアで肌の皮脂と水分量のバランスを整え、肌を清潔に保つことが大切です。スキンケアの基本は、肌を刺激しない洗顔と十分な保湿です。

正しい洗顔の方法は、肌に刺激を与えずに洗うことです。

1.手を清潔に洗う
2.顔全体をぬるま湯で軽く洗う。
3.洗顔料をしっかりと泡立て、泡洗顔を行う。
4.泡が残らないように顔をすすぐ。
5.清潔なタオルで水分を抑えるように擦らずに拭く。

洗顔料は、界面活性剤や添加物が入っていない固形石鹸がお勧めです。洗顔後には、化粧水でしっかりと保湿してください。製薬会社などが製造するニキビ用のスキンケア製品などがよいと思いますが、肌が弱く何を使用していいかわからないという人は、保湿効果のある医薬品もありますので皮膚科の医師にご相談ください。

皮膚科の受診も検討すべき

ニキビケアには固形石鹸が良い? 皮膚科医が教える「正しい洗顔」の画像1

【花房】基本のスキンケアをしても思春期の肌は、ニキビができやすい状態にありますので、ニキビができたら早めに皮膚科を受診することをお勧めします。基本的にニキビ治療は保険適用で行うことができます。

前回も解説したようにニキビには、まず白ニキビ(面皰、コメド)から始まり、アクネ菌により炎症が起きると赤ニキビにに進展し、さらに炎症が進み膿が溜まると黄ニキビになります。ニキビ治療は、毛穴の詰まりを取り除く、炎症を改善する、ニキビによる色素沈着を改善するという3点から、ニキビのタイプにあった治療を行います。

白ニキビにはピーリング作用によって毛穴の詰まりを取り除く効果がある「過酸化ベンゾイル」や「アダパレン」などが使用されます。

白ニキビが悪化し、炎症が進んだ状態の赤ニキビや黄ニキビには、「過酸化ベンゾイル)」や「アダパレン」などで毛穴の詰まりを取り除き、アクネ菌の増殖や活性を抑える「抗菌薬の外用薬(軟膏、クリーム、ローションなど)」を使用します。炎症の状態がひどい場合には、抗菌剤の内服薬を使用する場合があります。

【吉澤】治療には、どのくらいの期間を要するのでしょうか? また、治療を続ける上での注意点などありますか?

【花房】ニキビの程度によって治療に要する期間は様々ですが、治療終了の時期は医師の判断に従ってほしいと思います。

というのも、赤ニキビや黄ニキビが治ると全体に肌がきれいになった印象を受け、『ニキビが治った』と思いがちですが、一見して目立たない小さな毛穴の詰まり(コメド)があると、時間の経過とともに悪化することが多く、繰り返しできるニキビを防ぐには、コメド治療を継続することが有効です。

コメド治療には、前述した過酸化ベンゾイルやアダパレンを使用しますが、使用に伴い肌が乾燥する傾向になりますし、過酸化ベンゾイルはかぶれることもあるので、治療を継続する際は、ニキビ治療と合わせて、保湿を十分に行うことと、シミ(炎症後色素沈着)にならないように紫外線対策を行うことが重要です。

【吉澤】ニキビ治療は、ニキビをつくらないように正しいスキンケアを行うことと、ニキビができたら早めに皮膚科を受診し、治療を行うことが重要ですね。

ところで、私の子供たちのケースでは、ニキビに悩んだ息子たちとは対照的に娘は、時折、ニキビができると言った感じでした。しかし、たまにニキビができると大きく目立つニキビができるので、娘もニキビができるといつもショックを受けていました。男女でのニキビの特徴は異なるのでしょうか?

【花房】ニキビができるメカニズムは男女で同じですが、男女でニキビの特徴が異なる点もあります。男女のニキビの違いについては次回にお話させていただきます。