優秀だった中学生の成績が急降下した理由は? 医師が気づいた「栄養不足」

今野裕之、吉澤恵理
2023.05.25 09:37 2023.06.07 06:00

勉強する中学生の机

この記事の画像(1枚)

少子化の進む日本で幼児教育の市場が拡大しています。2021年度の保育・幼児教育の市場規模は4兆円を超えるという調査結果もあり、その過熱ぶりが伺えます。

幼児教育には様々なメソッドがあり、『天才を育てる』『頭のいい子を育てる』と題した高額な幼児教室に足しげく通うご家庭も少なくありません。もちろん、そういった幼児教育がお子様の能力を引き出す可能性もあるでしょう。

一方で4人の子どもを育てた私の経験から、子供の能力を引き出すためには、それ以前にもっと大事なことがあると実感しています。それは『食事』です。

今回は、2人のお子様の父でもある精神科医の今野裕之先生に『栄養と脳の関係』についてお話を伺いました。

優秀だった子に何が起きた?

今野裕之
医師の今野裕之さん

【吉澤】子どもの成長にとって栄養を意識することはもちろん重要ですが、食事は集中力、思考力、忍耐力などに影響するのでしょうか?

【今野】そうですね。実際に私が過去に診察した例では、ずっと優秀だったという中学生のお子さんが突然、成績が下がってしまい、ご両親が驚いて理由を聞くと『勉強に集中できない』『疲れやすく学校も楽しくない』と言ったため、ご両親がうつ病ではないかと考えてご当院へ連れてこられました。

しかし、診察ではどちらかというと身体的な症状が主体であり、気分の落ち込みなど精神的な症状は乏しかったことからうつ病ではないと判断し、血液検査を行ったところ重度の鉄欠乏性貧血があることがわかりました。

【吉澤】貧血は、体調に影響するばかりでなく勉強にも影響するということでしょうか?

【今野】はい。私たちが吸い込んだ空気中の酸素は赤血球に含まれるヘモグロビンと結合し、全身へ運ばれます。貧血になるとヘモグロビンが不足し、赤血球の酸素を運ぶ力が低下します。すると、脳へも酸素が十分に運ばれなくなり、酸素欠乏になってしまいます。

いうまでもなく脳にとって酸素は、活動するために必要不可欠なものですから、不足すると集中力・記憶力等の低下、意欲低下、眠気、疲労感など様々な症状が現れます。

【吉澤】その患者さんは、貧血の治療をされたのですか?

【今野】はい、鉄剤による貧血の治療と食事指導をしたところ、その後数ヶ月で回復し、すっかり元気になりました。勉強への取り組みも元に戻り、成績も伸びたと報告をいただきました。

これは鉄不足があったケースでしたが、タンパク質やビタミン・ミネラル・必須脂肪酸など、その他の栄養も十分にをしっかりととることが健やかな心身の成長につながり、勉強への意欲や成績にも大きな影響を及ぼします。

噛むことで脳が刺激される

親を見上げる子ども

吉澤さんは、お子様の食事で気をつけていた点はありますか?

【吉澤】私は、子どもが小さい頃は、何よりも『噛む力』をつける食事をつくるように考えていました。

具体的には、根野菜が多いお味噌汁や、ハンバーグを作る時も根野菜を刻んだものを入れたり、薄切り肉はアスパラを巻いたりして歯応えが出るように工夫しました。おやつには、きゅうりや大根、人参といった野菜ステッィクにお味噌をつけたもの。

そして、幼稚園の頃までは、食事の時は『30回噛んでね』と言って一緒に『カミカミ、カミカミ』と言いながら食事を取りました。その効果があってか、子どもたちは噛む力が育ちました。

【今野】それは、いい習慣ですね。食べるときによく噛むことが脳を広範囲に刺激し、活性化してくれます。また咀嚼力が弱いと食べるという動作で疲れてしまい、食が細くなる傾向にあります。

【吉澤】噛む力が脳にとって非常に重要であるということが分かりました。お子様と一緒にしっかりと噛むという習慣を付けたいですね。