偏食・小食の「食べない子」を「笑顔で食べる子」に変えるルール

山口健太
2023.12.19 18:14 2023.04.04 18:23

食べない子が食べる子に変わる
(イラスト:こたきさえ)

極度の小食や偏食の「食べない子」を専門にした食育カウンセラーとして、これまで全国で3000人以上の保護者を指導してきた山口健太さんは、誰でもすぐにできるコミュニケーションの工夫で、多くの子どもの小食・偏食を改善に導いてきました。

子どもの小食・偏食をなおすためには大人の意識改善が必要だと語る山口さんは親の4つの「しすぎ」を捨てるべきだと指摘しています。

※本稿は、山口健太著『食べない子が変わる魔法の言葉』(辰巳出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

好き嫌いは「悪」ではない。まずは大人が意識を変えて

悩ましい子どもの偏食
(イラスト:こたきさえ)

まずとても大切なのが、「好き嫌いなく、何でも残さず食べられる」ようになる必要はないということです。もちろん、「栄養をしっかり補えているかどうか」を見るのは、親としてとても大切なことです。

しかし、「好き嫌いなく、たくさん食べられる子の方が良い」という価値観はとても危険です。自分に対してはまだしも、子どもや他人に食を押し付けてしまうことになりかねません。押し付けられてしまえば、子どもが自分から楽しく食べられる未来が遠ざかってしまいます。

そもそも、嫌いなものが多いからといって、社会的に活躍できないわけでもありません。

食事による体づくりが大切なスポーツの世界ですら、野球だとイチローさん、サッカーだと中田英寿さん、体操では内村航平選手、フィギュアスケートでは宇野昌磨選手、テニスでは大坂なおみ選手などは、野菜があまり好きではないようです。ですが、その世界で大活躍していることは周知のとおりです。

要は、その人の食の個性を周りが理解することが一番大切なのです。

「全部食べられる子」を目標とする必要はありません。何度もお伝えしている通り、「楽しく食べられる子」になることが最優先です。

ただ、「残したものがもったいない」と思う方も多いと思います。この考え自体は、自然や命の恵みを大切にする気持ちや、食材・料理を作った方への感謝の気持ちですから、とても尊重すべき考え方だと私も思います。

しかし、そのように考えられるのは、その人が既に食に対して前向きなイメージを持っているからなのです。だからこそ、自分から「食材は大事にしよう」「もったいないから食べよう」という、素敵な意識が生まれるのです。

それは決して押し付けから生まれるものではありません。「もったいない精神」を押し付けることで、未来に自然と出てくるはずの「もったいない精神」を犠牲にする可能性があるということです。

よく「野菜を残すと農家さんが悲しむからちゃんと食べなさい」という勧め方がありますが、その押し付けによって、子どもがその野菜を嫌いになってしまった方が、農家さんも悲しむのではないでしょうか。

「楽しく食べられる」土台があれば、自然と命の恵みを大切にし、作ってくれた人たちへの感謝が芽生える子になりますから、心配はいりません。

山口健太

一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会 代表理事/株式会社日本教育資料 代表取締役/『きゅうけん|月刊給食指導研修資料』編集長/カウンセラー、講師

会食恐怖症の当事者支援活動や、既存の「食べない子どもへの対処法」に疑問を感じ、食育カウンセラー活動を始め、カウンセリングはこれまで延べ3000人以上、セミナー・講演の実施回数100回以上。カウンセリング、講座や講演、執筆活動を通して、食べない子に悩む保護者、学校や保育園の先生などにメッセージを伝えている。

Instagram:@shokuiku123