偏食・小食の「食べない子」を「笑顔で食べる子」に変えるルール

山口健太
2023.12.19 18:14 2023.04.04 18:23

食べない子が変わるために、親が手が手放すべき4つの「しすぎ」

ご飯を前に表情を歪める子

「食べない子」が変わるために、まずは保護者自身が「自分にはどの「しすぎ」の傾向があるか?」を考えてみましょう。私はこれを「大人の4つの「しすぎ」」と呼んでいます。具体的には次の4点です。

1 イライラしすぎ
2 不安になりすぎ
3 プレッシャーのかけすぎ
4 放置しすぎ

「イライラしすぎ」は、子どもが食べてくれないことでイライラしてしまい、食卓がギスギスした雰囲気になり、子どもがさらに食べなくなるというケースです。「楽しい」があっての「食べられる」ですから、これでは食は進みませんね。

「不安になりすぎ」は、子どもが食べないことを、必要以上に心配しすぎるケースです。大人の不安が子どもにうつり、余計に食べなくなってしまいます。もちろん、子どもが食べないと不安になる気持ちはよく分かります。それ自体は悪いことではありませんので、本書でその不安を解消していきましょう。

「プレッシャーのかけすぎ」というのは、たとえば「これくらい食べなさい」という圧力が、その子のキャパシティを超えてしまうケースです。

2018年6月に静岡県で当時小学6年生の児童が、担任から給食の牛乳を飲むよう強制されてPTSDを発症したとして、家族がその小学校を管轄する町に対し、250万円の慰謝料を求める訴えを起こしました。

この一件からも分かるように、子どもにプレッシャーをかけすぎると、食事のトラウマから精神障害を起こすこともあります。実際、私が会食恐怖症の642人に取ったアンケートでは、4分の1に当たる162人が「親からの食の強要が会食恐怖症の発症のきっかけになった」と回答しました。

「放置しすぎ」というのは、特に偏食がちな子が少しでも食べるように「好きなものしか食卓に出さない」などのケースです。これでは食べられるものがいつまでたっても広がりません。

子どもの体質だけではなく、この「大人の4つの「しすぎ」」が原因で食べられない場合が、思っている以上に多いのです。「食べない子」が変わるために、まずは大人がこれらの「しすぎ」を自覚し、そして手放しましょう。それが、「食べない子」が「楽しく食べられる子」に変わる第一歩です。

 

食べる量は子どもが自分で決める

偏食・小食の「食べない子」を「笑顔で食べる子」に変えるルールの画像1

社会心理学で「一貫性の法則」という原理があります。簡単にいうと「人は自分で決めたことを守りたがる」という意味です。

これは「食べない子」も同じです。

たとえば「しっかり食べようね」と言うよりも「どれくらい食べる?」と聞いて、自分で決めてもらった方が、事がスムーズに運びます。

給食を残す子がいない保育園として有名な「さくらしんまち保育園」では、この「自分で決める」ことを重視しています。

さくらしんまち保育園の給食は、セミビュッフェ形式で行われています(編集註:2020年1月当時)。配膳台の前に補助として先生が立ち、子どもたちにどれくらい食べるか聞いて配膳しますが、この時、こんな会話が交わされます。

先生:「Aくんは、サラダどれくらい食べる?」
Aくん:「いっぱい食べる!」
先生:「Bくんは、どうする?」
Bくん:「トマトはイヤだー!!」
先生:「1個くらいは食べてみたら?」
Bくん:「じゃあ1個だけ食べる!」

このような対話の上で、給食が配膳されます。「トマトがイヤだ」という子に対して、完全に放っておくわけではないのもポイントです。

こうしてしっかりとコミュニケーションを取ることで、強制せずとも、子どもたちが自分の意思でどれくらい食べるかを決めるようになるので、「自分で選んだものだからちゃんと食べよう」と思うわけです。

他にも、「7時になったらごはんだよ」と言うよりも「何時からごはん食べたい?」と聞いてみたり、「ごはん前にお菓子はダメ」と言うよりも「ごはんを食べられなくなるから後にしたら?」と聞いてみるなど、いくらでも応用できます。

ちなみに、さくらしんまち保育園では、食べる量だけではなく「食べ終わる時間」も子どもたちが決めています。3歳児以上になると、テーブルに班のメンバーがそろったら、時計を見て「この時間までにみんなで食べようね」と子どもたちが終わりの時間を決めて食べ始めるのです。

他にも、食器や子ども用の椅子、テーブルなどを買う際も、一緒に選ぶと食に前向きになるケースがあります。

子どもの場合は、たくさんの選択肢があると逆に選べないことがあるので、その際は親が事前に2案ほど用意しておきます。その上で「AとBどっちが良い?」と選ばせてあげると、子どもが選びやすくなります。

山口健太

一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会 代表理事/株式会社日本教育資料 代表取締役/『きゅうけん|月刊給食指導研修資料』編集長/カウンセラー、講師

会食恐怖症の当事者支援活動や、既存の「食べない子どもへの対処法」に疑問を感じ、食育カウンセラー活動を始め、カウンセリングはこれまで延べ3000人以上、セミナー・講演の実施回数100回以上。カウンセリング、講座や講演、執筆活動を通して、食べない子に悩む保護者、学校や保育園の先生などにメッセージを伝えている。

Instagram:@shokuiku123

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