悩ましい子どもの偏食…「初めての食材」でも笑顔で食べてもらうコツ
(イラスト:こたきさえ)
人前で食事ができない会食恐怖症に苦しんだ自身の経験を活かして、極度の小食や偏食の「食べない子」を専門にした食育カウンセラーとして、これまで全国で3000人以上の保護者を指導してきた山口健太さん。
子どもの小食・偏食をなおすためには大人の意識改善が必要だといいます。本稿では子どもが初めての食材や苦手な食材を食べるときのコツ等をお伝えします。
※本稿は、山口健太・著『食べない子が変わる魔法の言葉』(辰巳出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
大人が美味しく食べることで、食材にポジティブイメージを
(イラスト:こたきさえ)
初めての食材は、子どもにとっては怖い存在です。大人でも、海外旅行先で見たことのない料理が出てきたら、ちょっと怖いですよね。人生経験わずか数年の子どもにとっては、そういった食材や料理がたくさんあるのです。
大人の場合、物事を考える時に、無意識に具体概念と抽象概念を行き来させることができます。だから、もともとりんごを知っていて、初めて梨を見た大人がいたとしても、「これは形がりんごに似ているから、それと近い果物なんじゃないかな?それなら食べても大丈夫だろう」と考えられます。
しかし、子どもは具体と抽象が行き来する思考力が未発達です。つまり、りんごを知っている子が初めて梨を見た時に「同じようなもの」と認識することは難しいのです。だからりんごを食べられる子でも、初めて見る梨を警戒します。
特に子どもは少しの違いにとても敏感です。こういった場合は大人が、「これはりんごの仲間で、甘くて美味しいんだよ」などと教えてあげることが大切です。
また、「同じメニューのはずなのに、いつもと少し違っただけで、子どもが食べない」という経験を持つ方も多いのではないでしょうか。
たとえばいつも食べているお母さんのカレーを、子どもは「これがカレーなんだ」と認識していた場合、おばあちゃんが作ったカレーは、「いつものカレーじゃないから、これは初めての料理だ」と認識してしまうのです。こういった場合は、「これもカレーの1つなんだよ」と時間をかけて教えてあげることで解決します。
ですので、苦手なものや初めてのものでも、「食べなくても」並べた方が良いのです。まずは知ってもらったり、目を慣らしたり、興味を持ってもらうことがとても大切です。
子どもの場合は、「食べないと思っていたのに、いきなり食べた」ということが本当によくあります。セミナーなどでもよく「これは食べないだろうと思っても、食卓には並べておいたほうが良いですよ」とお伝えするのですが、その日のうちに「食べないだろうと思っていたものを晩ごはんに並べたら、自分から食べてビックリです」と報告をいただくことがあります。
ちなみに、食卓に並べるというのは、子ども用に用意するというわけではありません。まずはお母さんやお父さんが食べるだけでも良いのです。そうすると、必ずといっていいほど子どもは興味が湧くものです。
小さい頃、コーヒーを飲んでいる大人に憧れた方も多いのではないでしょうか。今、コーヒーを飲んでいる大人は、「コーヒーをちゃんと飲みなさい」と、子どもの頃に強制されていないはずです。きっと大人が飲んでいて、憧れのようなポジティブイメージをコーヒーに対して抱いたから飲むようになったのでしょう。
ですから、「食べなくてもいいから、苦手なものや初めてのものでも食卓に並べてみる」ことをまず実践してみることが大切です。