悩ましい子どもの偏食…「初めての食材」でも笑顔で食べてもらうコツ

山口健太
2023.12.19 18:13 2023.04.04 18:10

子どもが食べるようになるまでのスモールステップを大切に

子どもと野菜

「食べない子」が「楽しく食べられる子」になるためには、大人と子どもの「食べるまでのステップのズレ」を認識する必要があります。

大人が想定する「食べられない」から「食べられる」までの段階は次の3ステップ程度です。

1.苦手なものがある
2.一口でも食べさせてみる
3.子ども用に取り分けてみる

しかし、子どもが実際に感じているステップは、次のようなイメージです。

1.苦手なものがある
2.食卓に並んでいる
3.親が食べている
4.その食べ物について関心が出てくる(これ、なんだろう?)
5.その食べ物についての情報を得る(これって、そういう食べ物なんだ!)
6.食べ物について興味が湧く(ちょっと気になるなぁ)
7.試しに匂いを嗅いでみる
8.ペロッと味見をしてみる
9.一口食べてみる
10.自分用として食べる

これくらいの差があります。
これを頭に入れておくメリットはたくさんあります。

まず「食べていない状態でも、食べるための準備は子どもの内側で始まっている」と理解できるので、親があまり焦らなくなります。

そして、1つ1つのステップが非常に細かいので、「今この段階だから、次はこうしてみようかな」と具体的な行動プランを立てやすくなります。

また、子どもとの関わり方として非常に大切なのは、「常にできているところ(少しでも前に進んだ部分)」を見ることです。そうすると、さらに食べてくれるまでのスピードがアップします。

たとえば「料理の匂いを嗅いだだけで食べなかった」ことがあったとします。そういう時に今までだったら、「せっかく作ったのに匂いを嗅いだだけで、食べないなんて」と思っていたかもしれません。それを、「今日は匂いを嗅いだから一歩前進したな」と見てあげるようにするのです。

「本当にそれでいいの?」と思うかもしれませんが、まずはここから始めることが大切です。焦りすぎず、「1ヶ月に1つステップアップしたら順調」といっても良いくらいです。その上で、「できているところ」を見ていくようにしましょう。

 

迷ったら「自分が楽しい方」を選ぶ

食卓でのコミュニケーションにおいて、意外と重要なことがあります。それは、「迷ったら『自分が楽しい方』を最優先にする」ということです。
「子どもにとっての楽しい方」ではありません。「あなたが楽しい方」を最優先にするという意味です。

これは先に挙げた給食を残す子がいない保育園、「さくらしんまち保育園」でも大切にしていることです。

ある時、おやつの時間に部屋にジャズミュージックが流れていました。小嶋園長先生はその意図について、「実験的な取り組みですが」という前置きの上で、「子どもたちがリラックスすることはもちろんですが、それ以上に現場の先生たちに少しでもリラックスしてほしいから」と教えてくれました。

お家でも、子どもの楽しさばかりを優先すると、自分の心の充実が疎かになってしまい、結果的に食卓の空気はどんよりしてしまいます。

子どもがどうしても食べてくれない時、親御さんはつい「ここで踏ん張らないと」と思ってしまいますよね。でも、それで大人がしんどくなってしまっては、結果的にイライラが募り「なんで食べないの!」という結末になりがちです。そんな時は思い切って「今日は諦める」という選択肢を選びましょう。

「苦手なものも食卓に出さなくてはいけないから」と、無理に毎日子どものためのメニューを考える必要もありません。お母さんが「今日はこれが食べたい」と思ったら、今日の献立はお母さんの食べたいものにして良いのです。

「お菓子を控えさせないと……」と思いすぎて、自分までお菓子禁止にすることもありません。時にはお子さんと楽しくお菓子を食べてもいいし、たまには一人でこっそり食べたって良いのです。

親の心が安定していれば、食卓の雰囲気も明るくなります。それがお子さんの食のサポートにもなるのです。

山口健太

一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会 代表理事/株式会社日本教育資料 代表取締役/『きゅうけん|月刊給食指導研修資料』編集長/カウンセラー、講師

会食恐怖症の当事者支援活動や、既存の「食べない子どもへの対処法」に疑問を感じ、食育カウンセラー活動を始め、カウンセリングはこれまで延べ3000人以上、セミナー・講演の実施回数100回以上。カウンセリング、講座や講演、執筆活動を通して、食べない子に悩む保護者、学校や保育園の先生などにメッセージを伝えている。

Instagram:@shokuiku123

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