乳歯はどうケアする? 歯科医が教える「幼児期の歯磨き」で親が気を付けること

亀井孝一朗

子どもの噛む力をつけるためには

――最近、硬い物を食べられないなど、噛む力の低下が言われていますが。

【亀井】確かに、実感値として、噛む力は弱まっている気がしますね。口周りの筋肉は、0歳のときから育てていく必要があります。筋肉の発達のためには、母乳や離乳食の与え方、使用する哺乳瓶などが重要です。

母乳であれミルクであれ、それぞれにいいところはありますが、哺乳瓶は、母乳に比べて簡単にミルクが飲めてしまいます。そのため、口まわりの筋肉を鍛えるという観点からいえば母乳のほうがいいでしょう。哺乳瓶で育てる場合は、デザインなどで選ぶのではなく、口まわりの筋肉を鍛えることにも気を配ったものを選ぶことをおすすめします。

母乳で育てる場合は、乳頭の先だけをくわえて吸っている浅飲みではなく、赤ちゃんの口が大きく開き、顎が乳房にふれていて、なおかつ下唇が外向きに開いている深飲みをさせることが、口まわりの筋肉の発達にとって大切です。

一度、助産師さんなどに、深飲みできているのか、確かめてもらうとよいでしょう。

――なるほど。食事をするようになってから気をつけることはありますか?

【亀井】離乳食を食べる際の姿勢がとても大切です。足がしっかり床や椅子の踏み台などにつくようにしてください。足がブラブラだと、意識が散漫になり食事に集中していないため、しっかり噛むことができないといわれています。

その結果、噛む力が弱まって、顎の正しい発達が阻害され、丸飲みの癖、咀嚼回数の減少による食べ物の消化不良など、さまざまな影響が出てきます。このころの食事では、親が食べさせるだけでなく、お子さんに手づかみで食べさせることに挑戦してみてはいかがでしょう。食べる意欲の向上につながりますし、スプーンやフォークなどを使う練習にもなります。

大人と同じ食べ物を食べられるようになったら噛む習慣・噛む力を身につけさせるようにしてください。この時期は噛む習慣・噛む力を身につけさせることが大切です。

噛む力を育むことは、顎の発達、唾液の分泌、食べ過ぎ防止、脳の発達などさまざまないい影響があります。

この時期にやわらかい食事や、あまり噛まなくてすむものを与え過ぎると、噛む力や習慣が身につかず丸飲みの癖がついたり、口まわりの筋肉が育たず、顔立ちに悪影響を及ぼしたりすることがあります。

とはいっても、いきなりスルメなどの硬いものを食べさせても、嫌がるだけです。子どもが嫌がらない程度の硬さのものを用意し、「リンゴシャキシャキして、いい音がするね」などの声かけをしながら、噛むことが楽しいという意識づけをすることが大切です。