子どもがワガママになる最大の原因は? 「自己中心的な性格」を変える親の関わり方
子どもはしばしば自己中心的な態度を取り、ワガママを言って周囲を困らせます。これは一体どうしてなのでしょうか? 親を悩ませる言動の原因について、科学ジャーナリストのメリンダ・ウェナー・モイヤーさんが研究結果をもとに解説します。
※本稿はメリンダ・ウェナー・モイヤー[著]塩田香菜[訳]『うちの子、このままで大丈夫?がスーッと消える 科学的に正しい子育ての新常識』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)から一部抜粋・編集したものです
メリンダ・ウェナー・モイヤー(Melinda Wenner Moyer)
『サイエンティフィック・アメリカン』誌の寄稿編集者として表彰を受けており、『ニューヨーク・タイムズ』紙にも多数の記事を寄稿している科学ジャーナリスト。『スレート』誌コラムニスト。一男一女の母親でもある。
子どもって、どうしてこんなにわがままなの?
友人のセリアの話です。7歳の娘、エラと一緒に買い物へ行った帰り、運転中に携帯電話がなりました。義母(エラにとってはおばあちゃん)からだったのでスピーカーにつなげて通話したところ、悲しい知らせを聞くことになりました。エラのひいおばあちゃんが亡くなったのです。
ところがエラは全く動じない様子で、通話中ずっと、後ろの座席からおしゃべりを続けていました。しかも「帰ったらテレビ見ていい?」など、関係ない話題ばかり。
途中でエラが「誰が死んだの?」と冷ややかに言い放ったときには、こちらの声が電話の向こうに聞こえていないかヒヤヒヤしたそうです。セリアにとって、家に着くまでの8分間が長くつらいものだったことは、言うまでもありません。
やっと通話を終えると、今度はエラが「お葬式でスピーチをしていい?」と聞いてきました。エラは赤ちゃんの頃から年に一度はひいおばあちゃんに会いに行っていたので、なつかしい思い出でも話すのかと思い、「どんな話をしたいの?」と聞いてみました。
するとエラは、「ひいおばあちゃんがいなくなった私って、かわいそうでしょ」という話を始めたのです。そして「えーと、ひいおばあちゃんの名前って何だっけ?」と途中で何度も聞いては、ひいおばあちゃんと全く関係ない、自分についてのスピーチを続けたそうです。これが現実です。
子どもというのは、信じられないほど自己中心的なときがあります。大事なオンライン会議中にくだらないおしゃべりで邪魔してきたり、ブロックを山ほど持っているのに(さらに、キッチンの床にも散乱している)、人に貸すのを嫌がったり。
どんな状況でも自分中心に考える能力ときたら、驚異的です。しかも、明らかにそうすべきでない状況でもおかまいなし。別の友人の話ですが、1歳の誕生日を迎えた弟がプレゼントを開けていると、隣りに座っていた3歳のお姉ちゃんがわんわん泣き出し、「アタシのじゃないの!?」と言ったそうです。
この場合、子どもはわざと”ひとでなし”な言動をとろうとしているわけではありません。ただ自分を抑えられないだけです。幼児は、前頭葉の一部(計画性・論理性・理性・自制心をつかさどる部分)が未熟なのです。
大人の私でも、目の前で誰かがとびきり素敵なプレゼントをもらっていたら、うらやましくなります。だからといってわんわん泣き出したりしないのは、感情を表に出さないスキルを習得したからなのです(夫は気づいていないようですが)。
幼児はまた、「心の理論(theory ofmind)」と呼ばれる、相手の立場に立ち、相手の考え方を理解する能力も未熟です。そのため、自分の言動が相手にどう影響するかを理解するのが難しいのです。
もう少し上の年代の子でも、自己中心的でわがままになるときがあります。例えば、ある友人の7歳の甥は、母の日のお祝いでおばあちゃんが半日かけて準備した家族全員分のごちそうを目の前にして、「チキンナゲットのほうがいい」と駄々をこねたそうです。