「上の子を可愛いと思えない」きょうだい育児に悩む親に伝えたいこと
子育てには不安や心配がつきものです。でもそんなときこそ、子どもだけでなく自分のがんばりも「そのまま認める」視点が持てたらいいですね。子育てによくある不安がラクになる言葉を、天野ひかりさんがご紹介します。
※本稿は天野ひかり[著]とげとげ。[イラスト]『子どもを伸ばす言葉 実は否定している言葉』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)から一部抜粋・編集したものです
天野ひかり
NPO法人親子コミュニケーションラボ代表理事、フリーアナウンサー。上智大学文学部卒。テレビ局アナウンサーを経てフリーに。NHK「すくすく子育て」キャスターの経験を生かし、親子コミュニケーションアドバイザーとして講演や企業セミナー講師を務める。子どもの自己肯定感を育てるため自身で立ち上げたNPO法人親子コミュニケーションラボ代表理事、一般社団法人グローバルキッズアカデミー主席研究員。主な著書に『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)や『賢い子を育てる 夫婦の会話』(あさ出版)など。
とげとげ。
元ナースの漫画家でイラストレーター。著書に「夫ですが会社辞めました」(KADOKAWA)。日常を4コマ漫画にするのが得意。
インスタ:togetoge.i
上の子がかわいく思えない! これって親として失格ですか?
・「上の子かわいくない症候群」という言葉もある
下の子のお世話が大変な中、上の子が反抗したり、下の子に対して意地悪したりして、嫌気が差す瞬間、ありませんか?
実はこれ、珍しいことではないのです。「上の子かわいくない症候群」という言葉もあるくらい、多くのお母さんお父さんが悩みます。NGマンガを見てみましょう。
赤ちゃん返りする上の子にイライラしてしまう気持ち、よくわかります。上の子なんだから大丈夫! という期待もあって、つい我慢させてしまいますね。
一般的に、きょうだい育てでは「上の子を優先させるべき」といわれています。でもそれがかえって、うまく優先できないお母さんお父さんを責めてしまいます。
「上の子を優先しなくちゃいけないのに、下の子に手がかかる」
「上の子を優先したら、下の子がかわいそうで、結局イライラしてしまう」
真面目なお母さんお父さんほど、落ち込んでしまう傾向があるように思います。また、この問題が悩ましいのは「上の子をかわいく思えないこと」をなかなか相談できないこと。
でもね。実は、ほとんどのお母さんお父さんが、同じことで悩んでいます。赤ちゃんはちっちゃくてかわいくて、守ってあげたくなるように生まれてきます。
だから、下の子を大切にするのは人間の本能。それを邪魔する存在に思える上の子がかわいくなくなるのは、仕方のないこと。そう思えれば、自分を責める必要はなさそうです。
上の子を優先する育児って何?
ここで大事なのは、「上の子を優先する」をどう捉えるのか? ということ。
例えば、今回のマンガと同じことが起きたら、多くのお母さんお父さんが、弟を歩かせて、姉を抱っこしてあげること、と答えるのではないでしょうか。そしてこれが「上の子を優先する」の正解だと考えているようです。でもこれは間違い。
OKマンガを見てみましょう。
下の子には物理的に手がかかりますが、上の子には言葉が通じますよね。ですから上の子の気持ちを大切にしていることを、言葉と表情で伝える。これが「上の子を優先する」ことの本当の意味です。
けっして下の子をほったらかしにすることではないのです。下の子が泣いたら、もちろん抱っこしてあやします。
その際、上の子をほったらかすのではなく、「お姉ちゃんも、赤ちゃんのときにこんなふうに泣いては抱っこしたなあ。今はこんなに大きくなって、一緒に弟が泣き止むお手伝いしてくれるなんて助かる」というように、上の子の気持ちに寄り添った言葉をかけてください。上の子は「自分も大切にされているんだ」と実感できます。
そして「少しの間、我慢すること」「弟(妹)に譲ること」「お姉(兄)ちゃんとしての行動や振る舞い」「1人で遊ぶこと」「親に頼りにされる喜び」などを学んでさらに成長していけます。
するとイライラの元に思えた上のお子さんが、どんどん頼りになる存在になっていきます。そしてかわいく思えなかった時期も、あっという間に卒業です。
上の子がかわいくない!と思ったらやる5ステップ
①まずは、先輩ママも通った道なのねと受け止める
②上の子の成長を言葉にして伝える(上の子の小さかったときの写真や映像を見て、成長を実感するとより効果的)
③家事の負担やストレスを減らすことで、上の子に余裕をもって接する
④上の子を抱きしめる時間を作る(お風呂や寝る前などでもOK)
⑤お母さんお父さんが一人になれる時間を作って、子育てから離れることも大事(夫婦で交代したり、一時保育などを利用する)
ぜひ試してみてくださいね。